ミクストメディアとしてのアクセサリー|KOTENRA 小博良誠毅
吸い込まれるような美しい色彩や、作品ごとに異なる多彩な表現で小さな宇宙にさえ感じさせる作品は見る人を魅了する。
この度QUI STOREでの取り扱いスタートにあたり、デザイナーの小博良誠毅氏に独創的な表現の原点やアートやファッションについて今だから思うことを聞いた。
成安造形大学洋画コースにて油絵や空間演出デザインなどを学ぶ。
2012年KOTENRAをスタート。
━━━作品制作のきっかけは?
小さい頃から色や絵を描くことが好きで、大学では油絵を始め、ミクストメディアとしてのインスタレーションや空間演出デザインを学びました。
━━━大学時代はイギリスに留学されていましたね。
はい。一年間大学の提携校に留学し、日本を外側から見たことで日本ならではの美しさや色彩に興味が湧きました。
さらに日本の伝統にも興味を持ち、卒業制作では襖絵を制作し、卒業後は京都にある着物工房に三年半勤めました。
値段が付きにくいアートの世界にいる中で、モノの価値、人が購入するプロセスを考えるようになり、大学でアシスタントをする他に、料亭やホテルのサービスの仕事も経験しました。
人とモノ、人とファッション・アートがどのような形で結びついているのかを感じました。
━━━なぜアクセサリー制作を?
敷居の高いイメージを持たれやすいアートを、身近に感じてもらいたいと考える中で自然とアクセサリーという形になっていきました。
アート作品を身に着けてもらうという意識で制作しています。
━━━イマジネーションの源は?
庭園のような人の手が加わった自然が着想源です。自然を愛でることが好きで自然の草木の色合いに惹かれます。一人の時間は自宅の庭でガーデニングを楽しんでいます。
━━━お庭ではどのような植物を?
いろいろ植えていますが、今の季節(取材時は6月)はアジサイが綺麗です。
━━━人生に影響を与えた人は?
身近なところから遠いところまで数えきれないモノや人に感動を覚えてきています。
遠いところでは、アーティストのジェームス・タレル。
自然と人との調和を感じさせる一方で革命的なところもあり、人と自然、環境の共存という観点影響を受けています。
身近なところでは、大学で教鞭をとっていた元永定正先生。
亡くなってしまいましたが、一言一言に重みがあり、今でも当時の言葉を思い返します。
今よりも個人が発信し評価されることが難しい時代に海外で認められる作品を生み出していたことは本当に素晴らしいことですし、ご存命のとき作品を見ていただけたことは貴重な経験だと思います。
ただ、家族もそうですが、今まで出会った方々から影響を与えてもらったと感じています。
━━━ご自身の最も印象に残っている作品は?
シンガポールでの個展の際に制作したペインティング作品です。
KOTENRAの石のシリーズと同じような、通常のキャンバスの支持体をアクリル樹脂で構築してそれをどんどん上に重ねていく手法で作りました。
大学を卒業してからいろいろな制作を続けていましたが、その中でもアートが一枚の絵に留まらず、インテリアやファッションなどに生まれ変わる可能性を秘めた作品です。
━━━デザイナーとしての信念は?
心に残る感動してもらえる作品を作ることです。私自身小さなものに感動します。
例えば、道に咲いている花を見るだけでひたむきな感覚を覚えますし、土っぽさはあるものの特別な気持ちにさせてくれます。
自分の作品を手に取った方が小さくても心に残る感動を覚えてくれると嬉しいですね。
━━━ファッション業界は新型コロナウイルスの蔓延により、大量生産大量消費時代が終わり、新しいフェーズに入りました。今考えることは?
今年に入ってからサステナブル、エシカルというワードを聞くようになって自分でも調べています。今後は環境を考えられた生産方法や生産量がキーワードになってくると思います。
KOTENRAの視点だと、もともと大量生産できるものではありませんが、お客様のご希望に沿った色彩等のオーダーを受けるなど、環境に対しての取組も強化したいですね。
━━━KOTENRAの目指すべき姿は?
一般的なアクセサリー業界は一つで括れないくらいたくさんのカテゴリーがありますが、これからは「個人のニーズにこたえられるアイテム」と、「機能性、価格重視のアイテム」の二分化すると思います。
ファッション×アートなどの組み合わせなど多様性が出てくるのではないかと考えます。
SNSで国境がなく、人と人との距離が縮まった面もありますが、コロナなどで遠くなった一面もあり、コロナが出てきたことが人と人との接し方に変化をもたらすであろうとも思います。
ただそれはファッションにポジティブな変化を与えていくとも考えます。
KOTENRAも生活を豊かにする意味でポジティブに他にないものを目指していきたいです。