1/17(土)開催「渦き Resonant Wounds」、大小島真木が描き出す痛みと生の共鳴
本展は、これまでの代表的なシリーズに加え、本展のために制作された新作を交え、絵画、映像、立体、ドローイング、そして言葉(詩)によって構成される。多様なメディアが重なり合い、大小島真木の制作活動におけるひとつの節目が、確かな熱をもって立ち上がる。
出生と死、儀礼や芸能、地質や環境、生命の循環。大小島真木は一貫して、私たちの「存在の輪郭」に触れるテーマを掘り下げてきた。その根底にあるのは、“私たちが〈ある〉とはどういうことなのか”という問いである。
2022年から23年にかけて行われた長野県諏訪地域での滞在リサーチでは、日本列島が大陸プレートの境界に位置すること、その地質的条件が人々の世界観に与えてきた影響に向き合い、「根源的不能性」という言葉に結晶させた。火を噴き、揺らぐ大地に対する無力さ。その象徴として重ね合わされるのが、乳幼児の頭蓋に開く大泉門と、列島の下に走るプレートの裂け目=「起源の傷」である。傷は痛みでありながら、同時に生を可能にする条件でもある。その両義性が、作品の奥で脈打っている。

大小島真木《郷土》2025年、 アルシュ紙に水彩、鉛筆、H28.6xW37.8cm ©︎Maki Ohkojima

MAQUIS(大小島真木・辻陽介・久山宗成)《Milagros》2025年、ミクストメディア、H90xW65xD7cm ©︎MAQUIS
さらに2024年、文化庁の助成を受けて一年間滞在したメキシコでのリサーチは、大小島真木の思考に新たな層を加えた。征服の歴史が残した傷、その上に花開いた混淆文化、「死者の日」に象徴される死生観。そこに見出されたのは、痛みを克服するのではなく、抱きしめるように生きるという姿勢であり、「祈りとしての生」という感覚であった。
タイトルに掲げられた「渦き(うずき)」は、大小島真木による造語である。私たちの生が抱え持つ傷や脆さの源となる疼きが、互いに触れ合い、絡まり、響き合いながら渦を成し、世界を形づくっていくさま。その疼きは孤立した痛みではなく、共鳴であり、万物と共にここで「渦いている」ことの証でもある。

大小島真木《胞衣》2019-2022年、アクリル、油絵、顔料、刺繍、土、ラッカースプレー、布、H223xW395.5cm ©︎Maki Ohkojima
展示の核となる大作絵画《胞衣》(2022)をはじめ、映像や立体作品が浮かび上がらせるのは、分断を超えて響き合う「生」のかたちだ。説明しきれない痛みを抱えたまま、それでもなおこの生を祝福したいという思いが、会場全体に静かな振動として広がっていく。
会期中には、人類学者・石倉敏明を迎えたトークイベントも開催される。人はなぜ歌い、踊り、描いてきたのか。長年の対話を重ねてきた両者の言葉が、作品体験にもうひとつの深度を与えるだろう。
【プロフィール】
大小島真木(おおこじま・まき)
東京を拠点に活動する、大小島真木と辻陽介によるアートユニット。「絡まり、もつれ、ほころびながら、いびつに循環していく生命」をテーマに制作を行う。インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランスなどで滞在制作を行い、2017年には科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。近年は美術館やギャラリーでの展示に加え、舞台美術も手がける。
主な個展に「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」(2025年、KAAT神奈川芸術劇場)など。国際芸術祭「あいち2025」ほか、国内外の展覧会に多数参加。2023年より辻陽介との本格的な協働制作体制に入り、アートユニットとして活動している。
URL:https://ohkojima.com/#1
Instagram:@maki_ohkojima
【開催情報】
展覧会名:大小島真木 個展「渦き Resonant Wounds」
会期:2026年1月17日(土)-2月14日(土)
会場:ANOMALY
開館時間:12:00-18:00
休廊日:日月祝
※同時開催:青木野枝 版画展 1997-2025
Instagram:@anomaly_tokyo
オープニングレセプション:1月17日(土)17:00-19:00(作家在廊)
トークイベント:1月24日(土)18:00-19:00
登壇者:大小島真木、辻陽介、石倉敏明(人類学者)