西尾康之がひらく“薄膜の新世界”、9年ぶりの個展「コンパクト化」がANOMALYで開催へ
Nov 19, 2025 - NEWS
今回掲げられたテーマ「コンパクト化」は、位相幾何学の概念に触れながら展開していく。抽象性の高い数学的な考えを、西尾は環境問題の象徴でもあるビニールという極薄の膜に置き換え、立体へと変換した。透ける膜の奥で支柱群が支える形態は、風船のように閉じたり、壺のように開いたりする空間のイメージを軽やかに立ち上げる。

制作風景
西尾が長年向き合ってきた“皮膜”というテーマは、世界との境界線を探るための一つの装置にも見える。陰刻鋳造や仮想空間での造形は、実在しているのに手触りが遠い存在を生み出し、鑑賞者とのあいだに薄い虚無の層を残してきた。今回のビニール作品では、通常なら作品の完成とともに見えなくなる内部構造がそのまま視界に開かれ、内と外が同時に開かれるような、新しいバランスが生まれている。
今回同時に展示される、長編小説『不死』の挿絵として描かれたドローイング作品も見逃せない。
【プロフィール】
西尾康之
1967年東京生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒業。2020年度より東京藝術大学准教授。指で粘土を押す軌跡のみで作られた雌型から鋳造する独自手法「陰刻鋳造」で知られる。
全長5mの《ミンスク》(2004)、6mの《Crash セイラ・マス》(2005)など、大作を多数制作。水墨画、油彩画も発表し、2016年の山本現代での個展ではHMDによる3DCG作品「REM(RapidEyeMovement)」を発表した。
【開催情報】
展覧会名:西尾康之個展「コンパクト化」
会期:2025年11月22日(土) − 12月20日(土)
会場:ANOMALY
時間:12:00 − 18:00
休廊日:日・月・祝
Instagram:@anomaly_tokyo
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