「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」10/11(土)開幕、沖縄と東北の“記憶の海”へ身を投じる
本展のテーマは「漂着」。それは偶然でも必然でもあり、外から流れ着くものと内に響くものが出会う瞬間を意味する。ふたりの新作とコレクション作品4点が交差する展示空間は、土地と記憶、声と沈黙が重なり合う“漂着地”として立ち上がる。
沖縄と東北、それぞれの地に自らを置き、土地に根差した歴史や人々の営みを基にしながら、創作を通して離れた場所や他者の記憶との新たな接続を生み続けてきたふたり。その軌跡が、本展の試みと重なり合い、観る者を未知の記憶の海へ誘う。
山城知佳子は、沖縄、パラオ、そして東京大空襲の記憶を映像で結び、語りや歌、祈りを交錯させる映像インスタレーションを発表する。舞台は、即席のバラック(テント小屋)。人々が集い、知識を共有し、やがて去っていくという往還の構成の中で、個々の記憶が土地や時代を超えて響き合う。複層する歴史を編み上げるその空間は、観る者を記憶の深層へと引き込むだろう。

山城知佳子《Recalling(s)》2025 年 © Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist

山城知佳子《Recalling(s)》2025 年 © Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist

山城知佳子《Recalling(s)》2025 年 © Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist
志賀理江子は、写真表現を土台とした物語を通して、東北・三陸の海から陸へと続く物流の変化を「人間の作る道=人間社会のやり方」として描き出す。東日本大震災以後の復興開発のただ中で揺れ続ける人間精神やコミュニティを、宮城県北部で自在に使われる言葉「なぬもかぬも」を起点に批評的に捉える。高さ約4メートルにもおよぶ写真絵巻は、空間全体に広がり、鑑賞者の身体感覚を巻き込む没入的な体験を生み出す。

志賀理江子《行ってはいけない、戻ってこい》2025 年 ©Lieko Shiga. Courtesy of the artist

志賀理江子《褜男》2025 年 ©Lieko Shiga. Courtesy of the artist

志賀理江子《大五郎の逆さ舟》2025 年 ©Lieko Shiga. Courtesy of the artist
両作家ともに、これまでの主題を深化させつつ、新たな展開を見せる意欲作であり、スケールの大きなインスタレーションによる強い視覚・聴覚体験と、深い思索を促す表現の力が本展の大きな見どころとなる。
コレクションからは、ジャコメッティの素描《歩く人》やジンジャー・ライリィ・マンドゥワラワラ《四人の射手》などが展示され、ふたりの作品と呼応しながら新たな解釈を生み出す。

アルベルト・ジャコメッティ《歩く人》石橋財団 アーティゾン美術館
さらに会期中は、アーティスト・トークや研究者とのクロストーク、語り手と音楽家を招いた回など、多声的なプログラムが土曜ごとに予定されている。展覧会のテーマをより深く体感できる機会となるだろう。
光と声が重なり合い、遠い記憶がこちらに漂着してくる瞬間。記憶の海へ、あなた自身の感覚で潜り込んでほしい。
【作家プロフィール】
山城知佳子
1976年沖縄県生まれ。映像、写真、パフォーマンスを横断し、沖縄の歴史や文化を軸に作品を制作。近年の個展に「Song of the Land」(2024–25、リスボン)、「ベラウの花」(2023、香川)、「リフレーミング」(2021、東京)など。本展新作は2026年1月下旬、那覇文化芸術劇場なはーとで別形態の展示・上演を予定。*本展の巡回ではありません。
Instagram:@chikako_reframing
志賀理江子
1980年愛知県生まれ。2008年に宮城へ移住。写真を基盤に、人間と自然、世代を超える記憶を探る作品を制作。「ヒューマン・スプリング」(2019、東京)、「ブラインドデート」(2017、香川)、「カナリア」(2013、アムステルダム)などで注目を集める。本展新作は2026年、青森県立美術館にて別形態で発表予定。*本展の巡回ではありません。
Instagram:@liekoshiga_studio
【開催情報】
展覧会名:ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着
会期:2025年10月11日(土)‒2026年1月12日(月・祝)
会場:アーティゾン美術館 6・5階展示室(東京都中央区京橋1-7-2)
開館時間:10:00‒18:00(金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(10/13、11/3、11/24、1/12は開館)、10/14、11/4、11/25、12/28‒1/3
観覧料:日時指定予約制(9/11(木)よりウェブ予約開始)
ウェブ予約チケット1,200円、窓口販売チケット1,500円、学生無料(要ウェブ予約)
*同時開催展「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 安井曾太郎」も観覧可
*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケット購入可
*中学生以下の方はウェブ予約不要
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
スペシャルサイト:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/js_yamashiro_shiga/
Instagram:@artizonmuseum