ギャラリー小柳30周年記念、トーマス・ルフの個展「Two of Each」が開催、シリーズごとの対をなす2点が導く“写真とは何か”への問いかけ
本展は、同ギャラリーの開廊30周年記念展のひとつであり、2014年の「ma.r.s. and negatives」以来、11年ぶりのトーマス・ルフ個展となる。
トーマス・ルフは、デュッセルドルフ芸術アカデミーにてベルント&ヒラ・ベッヒャーに師事し、ベッヒャー派の系譜に連なる写真家である。一貫して写真というメディアの本質を探求し、時にカメラを手に、また時に既存のイメージを素材に再構築を試みる。そうした幅広い実践を通じ、写真表現の可能性を軽やかに拡張してきた。
本展では、ギャラリー小柳でこれまでに紹介されてきた代表的なシリーズ〈Substrate〉〈negatives〉に加え、本邦初公開となる〈flower.s〉〈untitled#〉からも2点ずつ出展される。展覧会タイトル「Two of Each」のとおり、各シリーズから2点を並置する構成により、反復と対比が導く“写真の多義性”が浮かび上がる。
たとえば〈Substrate〉は、日本の成人向けコミックやアニメのイメージを幾重にも重ね、さらに別の画像と合成することで、色彩の抽象空間を生み出すシリーズ。〈flower.s〉は、20世紀ドイツの女性写真家ルー・ランダウアーの花のフォトグラムに触発され、ルフが草花をライトテーブルで撮影し、デジタル処理でソラリゼーション効果を施した作品群だ。さらに新作〈untitled#〉では、ワイヤーで構成された構造体に振動や回転を加え、長時間露光で撮影。1950〜60年代の実験写真を思わせる表現で、光と影が描く軌跡がモダンなリズムを奏でている。
シリーズごとに2点を並べる形式は、それぞれのイメージの関係性に新たな視線をもたらす。繰り返しや差異、緊張や余白。その間に立ち上がる問いの数々が、観る者の内側で“写真とは何か”という根源的なテーマを再び揺さぶる。
展示初日となる10月18日(土)17:00〜19:00には、作家本人が在廊するレセプションも開催予定。ビューイングルームでは、ギャラリー小柳では初展示となる〈nude〉シリーズの作品も特別に公開される。この秋、写真表現の地平を揺るがすルフの最新展に、ぜひ足を運びたい。
© Thomas Ruff / Courtesy of Gallery Koyanagi
トーマス・ルフ
1958年、ドイツ・ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ。デュッセルドルフ芸術アカデミーにてベルント&ヒラ・ベッヒャーに師事。現在はデュッセルドルフ在住。東京国立近代美術館(2016年)などでの大規模回顧展をはじめ、世界各国の美術館で個展を開催。写真というメディアの構造に対する批評的アプローチで知られる。
Instagram:@thomasruff_com
トーマス・ルフ|Two of Each
会期:2025年10月18日(土)-12月13日(土)
オープニング・レセプション:10月18日(土)17:00-19:00
会場:ギャラリー小柳
住所::東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F
開廊時間:12:00-19:00
※11月7日(金)〜9日(日)のアートウィーク東京期間中は10:00-18:00
休廊日:日・月・祝日(※11月9日(日)は開廊)
電話:03-3561-1896
Web:http://www.gallerykoyanagi.com
Instagram:@gallerykoyanagi


