「見えないもの」を食す──異端の二つ星レストランを追ったドキュメンタリー『ムガリッツ』、9/19(金)公開
スペイン・バスク地方。ガストロノミーの聖地に佇む二つ星レストラン、ムガリッツは、もはや「レストラン」という枠を超えている。
毎年11月から4月までの半年間は営業を止め、スタッフ総出で新しいメニューを生み出す。皿に並ぶのは料理というよりも、挑発的なアートピース。食事はルールを破る遊びであり、時に怒りさえも引き出す体験だ。
監督はホラー映画『REC』シリーズで知られるパコ・プラサ。熱狂的ファンでもある彼が捉えたのは、オーナーシェフ アンドニ・L・アドゥリスと研究開発チームの実験室のような厨房だ。
ムガリッツを率いるアンドニ・L・アドゥリスは、かつて“世界一予約が取れないレストラン”として名を馳せた三つ星レストラン、エル・ブジで研鑽を積んだシェフ。その革新の精神を受け継ぎながら、ムガリッツでは「遊び」や「怒り」までも皿の上にのせ、より異端で実験的なガストロノミーを展開している。
蜂の巣を象った「ドローン」、花を手で掴みそのまま口に運ぶ「Suspension, flower fingers」、脂肪の膨らみを模した「世界のへそ」…。料理は指先で触れ、舌で遊び、身体で受け取る。古典的な順序や形式は排され、ただ「目に見えぬ物」だけがテーマとして立ち上がる。

「Drones(ドローン)」

「... or starve to death(…さもなくば飢え死にせよ)」

「The world's navel(世界のへそ)」
ムガリッツという場所を通じて、私たちは「食べる」という行為そのものがどれほど創造的で、どれほど艶めいた体験になり得るのかを目撃することになる。
Information
映画『ムガリッツ』
9月19日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
監督:パコ・プラサ
脚本:パコ・プラサ、マパ・パストール
2024年/スペイン/96分/カラー
原題:MUGARITZ. NO BREAD NO DESSERT
公式サイト:https://gaga.ne.jp/mugaritzmovie/