音楽家・渋谷慶一郎、最新アンドロイド・マリアを発表、「死はひとつではない」人型ロボットが示す新たな可能性
「アンドロイド・マリア」は、渋谷が10年近く取り組んできたアンドロイド・オペラやテクノロジーを用いた舞台芸術の成果をもとに、さらなる身体性と表現の進化、そして世界一美しいアンドロイドを目指して開発された。
これまでアンドロイドによる即興的な歌やリーディングといったソフトウェア開発による革新は実現されてきたが、本作ではハードウェアの根本的刷新に挑戦。これまで渋谷の作品で使用されていた空気圧駆動のアンドロイドとは異なり、50以上の関節をすべてモーター駆動化することで、より滑らかで有機的な動きが可能となった。
AIによるコンセプトデザインと会話プログラムを手がけたアーティスト・岸裕真、近年のアンドロイド・オペラでアンドロイドプログラミングを担当するコンピュータ音楽家・今井慎太郎をはじめ、総勢20名近くのコラボレーターや選りすぐりのエンジニア陣の協力を得て、誕生した「アンドロイド・マリア」。渋谷がかつて喪った最愛の妻“マリア”をモデルとしながらも、「死はひとつではない」という「THE END」以降の渋谷の一貫したテーマを具現化した作品でもある。
単なる機械ではなく、記憶、音楽、人工知能、そして拡張された身体性の交差点に立つ新たな存在として、「アンドロイド・マリア」は舞台芸術における“次なる演者となることを目指す。
造形は、古代から現代に至る多様な女神像や菩薩像をAIが学習生成したコンセプトデザインをベースにしており、下半身は地下茎を思わせる無数のチューブで覆われており、大地との繋がりや生命、存在そのものを想起させることを意図している。アンドロイドの声や動きは、それを見た人に今まで感じたことのない感情を喚起し、新しいコミュニケーションのモデルを提案している。
また、内蔵カメラとマイクで常時人間の存在を認識し、対話やパフォーマンスも可能となっている。今後さらなる進化を目指し、東京大学の池上高志教授をはじめとした国内外の様々な研究者、アーティストとの共同研究、開発も予定している。
「アンドロイド・マリア」は2027年にヨーロッパ初演を予定しており、渋谷の新作舞台作品への出演も決定している。本作は英国ロイヤル・バレエ団常任振付師であり、ヴェネツィア・ビエンナーレダンス部門の芸術監督も務めるサー・ウェイン・マクレガーが演出を行い、建築家・妹島和世が舞台美術を担当するコラボレーション作品となる。2025年11月5日(火)には、都内コンサートホールにて「アンドロイド・マリア」の本格的なデビュー公演が予定されており、公園の詳細は2025年夏に発表される。
渋谷慶一郎について
1973年東京生まれ。作品は先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ、オペラ、映画音楽、サウンドインスタレーションまで多岐にわたり、東京・パリを拠点に活動を行う。2012年初音ミク主演による人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』を発表、パリ・シャトレ座公演を皮切りにヨーロッパで巡回公演を行う。2018年AIを搭載したアンドロイドとオーケストラによる作品、アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を発表。2021年は新国立劇場の委嘱新制作にてオペラ作品『Super Angels』の作曲を務め、東京フィルハーモニー交響楽団と共演。2022年ドバイ万博にてアンドロイド・オペラ『MIRROR』を発表、2023年にパリ、2024年に東京凱旋公演。また、サウンドインスタレーション作品『Abstract Music』を2023/2025年PRADA MODE、2024年ミラノデザインウィークにてLEXUS BEYOND THE HORIZON、2025年Google Pixel京都などイベントにて展示。テクノロジー、生と死の境界領域を、作品を通して問いかけている。
製作クレジット:
Concept and Direction: Keiichiro Shibuya
Mechanical Design and Android Producer: Tadashi Shimaya
AI Programming and Concept Visual: Yuma Kishi
Android Programming: Shintaro Imai, Soyo Kandagawa, Taiki Niimi, Yuta Ogai
Face Production: Jun Migita
Visual Design & 3D Printing: PUNKT Inc.
Upper Body Mechanism Development: ASAI ENGINEERING Co., Ltd.
Electronics and System Development: Intelligent Machine Lab. Co. Ltd.
Eye Camera System: Sunataro Hosoi
Sound Advisors: ZAK, Yuki Suzuki, Takeo Watanabe
AI Programming Advisor: Takashi Ikegami
Technical Supervisor: Motoi Ishibashi
Technical Management: So Ozaki
Project Management: Natsumi Matsumot