ギャラリー小柳、グループ展「無音 silence」を6/28(土)より開催、ミヒャエル・ボレマンスの映像作品が11年ぶりに日本公開
展覧会タイトル「無音」とは、文字通り“音のない世界”を意味し、実際には存在し得ないその世界を想像的に捉えたアプローチが作品を通じて試みられる。
ボレマンスの《Taking Turns》は、かつて描いた〈Automat〉を原点にした映像作品で、2014年の個展以来、11年ぶりに日本での公開となる。無音の中、女性が等身大のトルソーを抱えて歩く静謐な映像は、観る者を非現実の夢へと誘う。
ミヒャエル・ボレマンス 《Taking Turns》2009-2013 年
35 ミリフィルム(ブルーレイ化)© Michaël Borremans / Courtesy of Gallery Koyanagi
青柳龍太は、収集したオブジェクトを正方形の空間に精緻に配置したインスタレーション〈SANDPLAY(箱庭療法)〉シリーズから、《untitled. 2》(2024年)を出展。語られぬ記憶や時間の痕跡を内包したオブジェが、静かな調和と美しさを持って存在する。
青柳龍太 《untitled. 2》2024 年
シャトル、石器、缶、當麻寺のかけら、シーグラス、 グラス、三角定規、蝋燭、皿 © Ryota Aoyagi
五十嵐大地は、樹脂などで複製した静物を撮影し、その画像データを元に描いた静物画《Still Life with a Silver Fork and Lambs》(2025年)を展示。複製と変容を繰り返す過程における本質の揺らぎを映し出す。
五十嵐大地 《Still Life with a Silver Fork and Lambs》2025 年
キャンバスに油彩 53 x 65.2 cm © Daichi Igarashi
橋本晶子による《Hidden Box Ⅲ / Waves》(2025年)は、波の風景を内包した箱型作品。上から覗けば、渡り鳥の影が現れ、場所を越えて“今ここ”と“離れたどこか”を結ぶ案内人のように鑑賞者を誘う。
橋本晶子 《Hidden Box Ⅲ / Waves》2025 年
鉛筆、アルシュ紙、唐松、柿渋、ガラス、生花 箱: 高さ180 × 幅330 × 奥行き195 mm ガラス: 高さ50 × 幅65 × 奥行き65 mm © Akiko Hashimoto
展覧会初日には、青柳、五十嵐、橋本が在廊し、17時から19時までレセプションを開催。18時からは3名によるアーティストトークも行われる。
グループ展「無音 silence」
会期:2025年6月28日(土)-8月9日(土)
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:日・月・祝祭日
レセプション:6月28日(土)17:00-19:00
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
アクセス:東京メトロ有楽町線 銀座一丁目駅7番出口より徒歩1分
URL:http://www.gallerykoyanagi.com
Instagram:@gallerykoyanagi
ミヒャエル・ボレマンス
1963 年、ベルギー中西部のヘラールスベルヘン生まれ。現在はゲントおよびロンセで制作を行う。フランドル絵画の伝統を想起させるような精緻な技術を用い、絵画やドローイングを手がける。描かれる人物はしばしば何かの作業に没頭しており、時に身体の一部がかけた様子は、映画や舞台セットのような非日常的な印象を与える。日常に潜む不条理や危うさを、曖昧で矛盾に満ちた情景で表現し、ベルギーのシュルレアリスム絵画を彷彿させながらも、具体的な意味や物語を拒むコンセプチュアル・アートの影響も見受けられる。絵画と同じ雰囲気を称える映像作品にも積極的に取り組む。
1996 年のゲントでの初個展の後、写真から絵画に本格的に転向し、国際的な評価が高まる。
青柳龍太
現代美術家。2005 年より、主にファウンドオブジェを用いたインスタレーション作品の発表を続ける。2010 年から数年間、東京・神楽坂の裏路地で骨董商を営んでいた経験があり、骨董や古美術に造詣が深い。その経験を生かし、2014 年と2024 年には杉本博司、ソフィ・カルと三人展を行う。2018 年3 月発行の雑誌『美術手帖』よりエッセイ「我、発見せり。」を連載中。近年はキュレーターとしても活動し、展示ケースやキャプションを用いず、類を見ない展示空間を作り上げ、その手腕が注目を集めている。
五十嵐大地
2022 年に東京藝術大学大学院を修了したばかりの新進作家。主に、複製技法を用いて自作したモチーフを基に静物画を制作する。例えば、対象物の型を取って樹脂などで複製し、それらを撮影した写真を写実的な筆で捉えることにより、複製の過程で原型が変化する様や、人の認識における本質の所在を探ろうと試みる。立体造形から写真、絵画へと複数のメディアをまたぎながら一つの作品を作り上げ、繰り返す変容の中に生まれる差異の集積を描き出す。
橋本晶子
膨大な作業に基づく細密な鉛筆画を中心に、インスタレーションを展開する。展示空間に繰り返し足を運んで徹底的にその場をリサーチし、空間との対話を重ねることで、光や影までも取り込んだサイト・スペシフィックな作品を生み出す。絵画と空間が呼応した一回性の作品を構成する様は、作家曰く「風景をつくる」行為であり、鑑賞者を目に見えている空間の“その先の世界”へと誘う。「第14 回 shiseido art egg」でグランプリを受賞し、今後の活躍が期待される気鋭の作家。