写真家 三部正博とパピエラボによる展示「PRINT MATTERS」が開催。
写真と印刷物の往来
写真家、三部正博と、「紙と紙にまつわること」をテーマに店、 デザイン、印刷のディレクションなどを行うパピエラボによる展示「PRINT MATTERS」が開催。
三部正博とパピエラボが数年に渡って共に取り組んでいる のが、三部が近年撮りためているランドスケープの写真を素 材として、パピエラボが印刷物をデザイン、製作するプロジェクト。
本展では、毎年ニューイヤーカードとして継続しているこの共作を発展させて、活版印刷、リソグラフ印 刷、シルクスクリーン印刷による印刷物10点と、印刷物の素材となった写真を含むクロモジェニックプリント10点を展示販売。 日本国内で撮影されるランドスケープの連作を通して三部がとらえようとするのは、ありきたりな風景に潜む人間と自 然の曖昧な境界の生々しさ。自然の中に垣間見る人為の 跡や去った人間たちの残像。僅かな違和感を手掛かりに、両者の視点で連作をすべて見通し、像として写っているものと写っていないものの均衡を見極めながら、各印刷技術の特徴を踏まえて適した写真を厳選して、本展で発表する印刷物が製作された。写真家としての立場から三部は、第三者であるパピエラボが自身の写真を印刷物に転換する過程で、単色での表現や紙の選択など、撮影者である自分が意図しない 要素が加わることで、現像処理によって印画(PRINT)とし て可視化される写真とは異なるあり方が可能になることに 興味があると言う。
両者がこのプロジェクトで目的とするのは、印刷のプロセスを経ることによって写真の見え方や在り様が変わる可能性、 また写真を素材にすることで印刷技術の潜在力を引き出せる可能性について、お互いの立場から考察すること。写真が多くの場合に目的とする被写体の忠実な再現ではなく、 写真の諸要素を削ぎ落とし、被写体をあらわすのに不可欠な輪郭や色彩、質感、陰影のみを残してなお見える像を浮かび上がらせる印刷物の面白みを追求している。そうしたアプ ローチによって同時に、写真の中で像にはならずに漂っている気配を示すことができると考えている。内向的な欲求で 撮影された写真が「印刷」という手段によって解放され、紙 という形態になることで展開が広がり得ることも、写真と印 刷物の往来がもたらす産物だと期待する。
PRINT MATTERS MASAHIRO SAMBE & PAPIER LABO.
会期|2022 年 5 月 17 日(火)ー 5 月 31 日(火) ※ 5 月 23 日(月)休み
会場|BaBaBa 東京都新宿区下落合 2-5-15-1F
TEL: 03-6363-6803 時間|12 時 ー 19 時
写真|三部正博 デザイン、印刷ディレクション|江藤公昭(PAPIER LABO.)
三部正博 Masahiro Sambe
写真家。1983 年、東京生まれ。泊昭雄氏に師事後、2006 年に独立。主に静物、 ポートレート、ファッションを被写体として、広告、雑誌、カタログなどの分野 で活動する。近年、ライフワークとしてランドスケープを撮り続けている。 http://3be.in/
パピエラボ PAPIER LABO.
「紙と紙にまつわること」をテーマに 2007 年に開店。好みと縁を頼りに世界中 から集めるプロダクトやオリジナルプロダクトを取り扱う。印刷物やロゴなどの デザインや、活版印刷をはじめとした印刷、紙加工のディレクションも行う。 http://www.papierlabo.com/