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SNS時代に疲れた人に読んで欲しい本 │ 穂村弘エッセイ本3選

Apr 15, 2022
日々仕事に追われ忙しく過ぎていく毎日、次第に遠のいていた読書。
心の片隅では本がチラついているのに、気付けば携帯を触っている時間が増えていく。
無意識に他人と比べてしまうこの世の中に、自分という存在を取り戻してくれる。
そんなエッセイを紹介したい。

柔らかく独特な妄想世界から、急に現実へと引き込まれるギャップ。
自虐的に描かれる赤裸々な体験談は、思わず笑ってしまうが決して他人事には思えない。

心理状況によって手に取る本は変わるが、穂村弘の本はいつでも開ける不思議な魅力が詰まっている。

SNS時代に疲れた人に読んで欲しい本 │ 穂村弘エッセイ本3選

Apr 15, 2022 - SHOPPING
日々仕事に追われ忙しく過ぎていく毎日、次第に遠のいていた読書。
心の片隅では本がチラついているのに、気付けば携帯を触っている時間が増えていく。
無意識に他人と比べてしまうこの世の中に、自分という存在を取り戻してくれる。
そんなエッセイを紹介したい。

柔らかく独特な妄想世界から、急に現実へと引き込まれるギャップ。
自虐的に描かれる赤裸々な体験談は、思わず笑ってしまうが決して他人事には思えない。

心理状況によって手に取る本は変わるが、穂村弘の本はいつでも開ける不思議な魅力が詰まっている。
Profile
穂村弘(ほむら・ひろし)
歌人

北海道札幌市出身の歌人。

歌誌「かばん」所属。 加藤治郎、荻原裕幸とともに1990年代の「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。批評家、エッセイスト、絵本の翻訳家としても活動している。

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世界音痴 

”飲み会が苦手である。友達にそう云うと、飲み会なんて、ただ自然に楽しめばいいだけじゃないか、と不思議がられる。だが、私はまさにその「自然に」楽しむことが、いちばん苦手なのである。”

(『世界音痴。』より 引用)

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日本経済新聞にて連載されていたこのエッセイは、タイトル通り世界と自分の”ズレ”について、自身の体験談を元に綴っている。

当時39歳独身の穂村弘は、夜中にベッドの中で菓子パンをむさぼり食い、ネットで昔の恋人の名前を検索し、青汁とサプリメントと自己啓発本で「素敵な人」を目指している。

一見、内向的で気の弱そうな男性に見えるが、読み進めていくうちに非常に強い自己愛が土台にあることが垣間見えてくる。人1倍、人目を気にしてしまう裏にはこんな要素が含まれているのかもしれない。

まるで自分の心をのぞかれているような感覚になる不思議な当書は、自分と世界の”ズレ”に悩んでいる人にぜひ読んで欲しい一冊。

 

もしもし運命の人ですか。

”何年もつきあっていた相手の女性に、かつてこう云われたことがある。「誰のことも、一番好きな相手のことも、自分自身に比べれば十分の一も好きじゃないよね、あなたは」”

(『もしもし運命の人ですか。』より 引用)

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”運命の人”と”理想の自分”の狭間にある歪なバランスについて描かれているエッセイ本。

とても乙女心をくすぐるタイトルだが、よくあるほっこりとした恋愛系エッセイではない。なぜなら、強烈な自己愛と鋭敏な感受性を持ち合わせた穂村ワールド全開だからだ。

数ある題材は誰しもの身近に起こりうる体験談が多く、一見共感するものばかりだが、穂村弘の身体を通れば2層も3層にも深ぼりされ人間の核心を突いてくる。

自分の頭から流血していても気付かないワイルドな男に憧れ、助手席に乗せた女性が寝ている間に海に連れていく理想を思い描き、気になる女性がヨーダに似ていても気にすることないんだと最近知る。

こんなにも癖が強いのに、全て読み終わった後に残る感情は、穂村弘かわいい。なのだから不思議だ。

 

蚊がいる

”他のひとはどうなんだろう。みんなも普通の大変さの地獄を味わっているのか。私がそうしていたように、会社のトイレで震えながら十分だけ休んでいるのか。でも、テレビや雑誌を見ていても、そんな感じは全然しない。”

(『蚊がいる』より 引用)

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横尾忠則がカバーイラスト・デザインを手掛けている当書は、ついつい手に取ってしまう目を惹くデザインだ。

「ある」のに「ない」ことにされている現実。小さな不安と違和感を、その鋭い自分観察と分析力で綴られていくこのエッセイは、自分でも気付くことのない心のモヤモヤがはっきりと文字化されており爽快感を覚える。

自分優位な状況下ではパッチワーク紳士になることができ、テレビの中のアナウンサーの目が充血していると少し安心する。年季のはいった万年筆は味があって素敵だと思っていても自分の物に傷がつくと凹む。誰よりも人間らしい人間、それが穂村弘なのだ。

穂村弘のエッセイはいわば人生の手引書だ。

自分はズレていなかった。”ズレ”ているのは世界なのかもしれない。

  • ライター : Seiko Inomata

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