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杉本博司の原点、銀塩写真による静謐な問いかけ──「杉本博司 絶滅写真」2026年6月に東京国立近代美術館で開催

Nov 20, 2025
東京国立近代美術館(東京・竹橋)では、2026年6月16日(火)から9月13日(日)まで、展覧会「杉本博司 絶滅写真」が開催される。(PHOTO:杉本博司 《放電場 163》 2009年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi)

杉本博司の原点、銀塩写真による静謐な問いかけ──「杉本博司 絶滅写真」2026年6月に東京国立近代美術館で開催

Nov 20, 2025 - NEWS
東京国立近代美術館(東京・竹橋)では、2026年6月16日(火)から9月13日(日)まで、展覧会「杉本博司 絶滅写真」が開催される。(PHOTO:杉本博司 《放電場 163》 2009年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi)

杉本博司は、銀塩写真を基軸に、建築、舞台演出、陶芸、和歌、書、料理と多様な表現を展開してきた現代美術作家。日本の古典芸能に基づいた舞台演出ではヨーロッパ各地やニューヨークでも高く評価され、建築分野では「小田原文化財団 江之浦測候所」の構想から運営までを手がけるなど、その活動は国内外に広がっている。

本展では、杉本が1970年代後半から現在に至るまでに制作した銀塩写真約65点を展観。制作初期からの表現の変遷を、3つの章、全13シリーズを通じてゆるやかに紹介する。

第1章「時間・光・記憶」では、1970年代から1980年代に制作され、杉本の評価を確立するきっかけとなった〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉の三部作を中心に構成。〈ジオラマ〉シリーズの《ポコット族》(2025年)なども初めて展示される予定となっている。

杉本博司 《 ポコット族》 2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×185.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司 《パレス・シアター、ゲーリー》 2015年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×149.2cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 

杉本博司 《相模湾、江之浦》 2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×149.2cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 

第2章「観念の形」では、人間の知性や想像力によって生み出された「かたち」に着目。〈観念の形〉〈スタイアライズド・スカルプチャー〉など、1990年代末から展開されたシリーズを通して、作品世界が拡張していく過程を紹介する。

杉本博司 《観念の形 0003》 2004年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司 《スタイアライズド・スカルプチャー 120,[クリスチャン・ディオール、Bar、1947]》 2025 年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 

第3章「絶滅写真」では、銀塩写真というメディアの始原へと立ち返りながら、〈前写真、時間記録装置〉〈フォトジェニック・ドローイング〉〈Opticks〉など全6シリーズを展開。終焉を迎えつつある写真技法と、そこから浮かび上がる“絶滅”を巡るヴィジョンの行方を探る。

杉本博司 《棘のある三葉虫》 2008年 プラチナプリント 93.6 ×75cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司 《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ》 1999 年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司 《Opticks 087》 2018年 タイプCプリント 119.4×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 

また、杉本が写真作品制作において、撮影時および暗室での作業工程の覚書として記録してきた未公開資料「スギモトノート」を同館所蔵杉本作品と共に、同館所蔵作品ギャラリー3階にてサテライト展示する。記録は1970年代半ばから始まり、作品の裏側にある思考とプロセスをたどる貴重な記録だ。

杉本博司 《陰翳礼讃 98.0001》 1998 年 タイプCプリント 149.2×119.4cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 

銀塩という技術と、それを使い続けることで見えてくる視点の数々。“絶滅”という言葉が、いま何を指しているのか。写真というメディアの限界と可能性をあらためて見つめ直す機会となる。

 

【プロフィール】
杉本博司
1948年生まれ。1970年に渡米後、1974年よりニューヨークと日本を行き来しながら制作を続けている。代表作に〈海景〉〈劇場〉シリーズがある。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、2009年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年には構想から10年をかけて建設された文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を開設した。
演出と空間を手がけた『At the Hawk’s Well / 鷹の井戸』は2019年秋にパリ・オペラ座で上演。著書に『苔のむすまで』『現な像』『アートの起源』などがある。
主な受賞歴に、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)。2010年秋の紫綬褒章受賞、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年には文化功労者に選出、2023年に日本芸術院会員に就任。

【開催情報】
展覧会名:「杉本博司 絶滅写真」
会期:2026年6月16日(火)〜9月13日(日)
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
開館時間:10:00〜17:00(金曜・土曜は20:00まで)
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社
公式サイト:https://art.nikkei.com/sugimoto/
問い合わせ先:ハローダイヤル 050-5541-8600
※休館日・観覧料・イベント情報等については詳細が決まり次第、展覧会公式サイト等でお知らせ予定

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