都市と宇宙を貫く「⽳」のメタファー、Chim↑Pom from Smappa!Groupの個展「⽳の中の⽳の中の⽳」がANOMALYで開催中
本展は、マンホールや下水道といった都市インフラに潜む「⽳」と、宇宙空間に漂うデブリ(宇宙ゴミ)という、まったく異なるスケールの“見えない空間”を横断しながら、「残骸」「欠如」「不可視」といった概念をめぐるChim↑Pomの思考と実践を、壮大かつ緻密に編み上げた意欲的な展示である。
タイトルの「⽳の中の⽳の中の⽳」が示すように、⽳は単なる空虚や欠損ではなく、新たな意味や秩序を誘発する“生成の場”として再考される。都市の下層に広がるインフラの「⽳」、そこに忘却された廃棄物、さらには宇宙空間を漂う未来の遺物としてのデブリ。それらは無関係のようでいて、いずれも人間社会の営為の“痕跡”であり、意識の周縁に押しやられた「不要なもの」の象徴でもある。
たとえば新作の《ビルバーガー》では、ビルの構造体に挟まれた廃棄物が都市の「⽳」に堆積する様子を通して、見えざる秩序や繰り返されるスクラップ・アンド・ビルドを批評的に浮かび上がらせる。また、極小の垢を素材にした《垢太郎》の新作は、宇宙の壮大さとは逆方向のミクロな視点から「不可視」を可視化する。
現代社会における“ゴミの極限的形態”とも言える宇宙デブリは、テクノロジーの進展とともに生み出され続ける「負の遺産」だ。本展はそうしたテーマを単なる環境問題の提示にとどめず、都市論・アート史・SF的想像力までを含む壮大な文脈へと引き上げる。ロバート・スミッソンのアースワークや、ミニマリズムの空白概念といった系譜とも呼応しつつ、Chim↑Pomらしい軽やかさで再構築されている点にも注目したい。
アートという行為が「⾒えないものをどう見せるか」という根源的な問いに挑む本展。社会や宇宙の“周縁”に押しやられたものたちの声なき声に、耳を澄ませたくなる。
Chim↑Pom from Smappa!Group
2005年に東京で結成されたアーティスト・コレクティブ。卯城⻯太、林靖⾼、エリイ、岡⽥将孝、稲岡求、水野俊紀によって構成される。現代社会への批評的介入とユーモアを武器に、国内外で多彩なプロジェクトを展開。2022年より現名称に改名。主な展覧会に「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」森美術館(2022年、東京)、「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」ANOMALY(2020年、東京)などがある。
Instagram:@chimpomfromsmappagroup
⽳の中の⽳の中の⽳
会期:2025年10月11日(土)〜11月9日(日)
会場:ANOMALY
住所:〒140-0002 東京都品川区東品川1丁目33−10 TERRADA Art Complex1 4F
開廊時間:12:00〜18:00(Art Week Tokyo期間:11月5日〜9日は10:00〜18:00)
休廊日:日・月・祝(11月9日は開廊)
オープニングレセプション:10月11日(土)17:30〜19:00
観覧料:無料
公式サイト
Instagram:@anomaly_tokyo



