「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」、長崎県美術館で9/7(日)まで開催中
本展は、同館の開館20周年と、長崎にとって被爆80年という節目にあわせ、原爆のみならず、それを引き起こした戦争そのものに焦点を当てる。中心には、長崎県美術館が所蔵するフランシスコ・デ・ゴヤの版画集〈戦争の惨禍〉全82点が据えられ、それらとともに、他の芸術家たちが戦争をどのように視覚化してきたかを約180点の作品で多角的に考察する構成となっている。

フランシスコ・デ・ゴヤに帰属《巨人》1808年以後 油彩・カンヴァス プラド美術館蔵 © Photographic Archive. Museo Nacional del Prado. Madrid
本展では、「ゴヤが見た戦争のすがた」「人間の暴力、そして狂気」「無垢なる犠牲、名もなき民衆の死、性暴力」「身体に刻まれた傷」「飢えと困窮」「『私は見た』―目撃者としての視点」「記憶の継承」という7つの章を通して、戦争を主題として作品制作の多面性を描き出す。
その中で「ゴヤが見た戦争のすがた」では、プラド美術館から特別に借用する油彩画《死した七面鳥》や、ゴヤに帰属する《巨人》が公開され、18〜19世紀の巨匠が捉えた戦争の姿に迫る。藤田嗣治やパブロ・ピカソによる戦争画は、戦時下の人間の暴力と狂気を示唆し、他のテーマでは戦場の不条理や被爆者・収容所経験者の作品制作、飢餓、そして記憶の継承が取り上げられる。

フランシスコ・ デ・ ゴヤ〈戦争の惨禍〉《15番 もう助かる道はない》1810–14年(1863年初版) 長崎県美術館蔵

フランシスコ・デ・ゴヤ《死した七面鳥》1808–12年 油彩・カンヴァス プラド美術館蔵 © Photographic Archive. Museo Nacional del Prado. Madrid

丸木位里・俊《母子像 長崎の図》1985年 紙本着色 長崎県美術館蔵

池野巌《呼》1974年 油彩・ カンヴァス 長崎県美術館蔵

青木野枝《原形質/長崎》2025年 鉄、ガラス、銅線 作家蔵 © Noe Aoki, courtesy of ANOMALY 撮影:山本糾

森淳一《Sally》2014年 木、大理石、象牙 作家蔵
特別出品として、ピカソの《ゲルニカ》原寸大複製陶板がエントランスロビーに展示される。《ゲルニカ》は1937年、スペイン内戦下でゲルニカが反乱軍を支援するドイツ空軍によって無差別爆撃を受けた事実を告発するために描かれた、ピカソの最高傑作であり、20世紀を象徴する反戦絵画である。今回展示される複製陶板は1997年に大塚オーミ陶業株式会社が製作したもので、同年に来日したピカソの息子クロード・ピカソが「今まで製作した複製の中でも最高の出来」と高く評価した。完成度の高さから、原作の絵画的迫力と放たれるメッセージを十分に想像させる作品となっている。
被爆80年を迎える長崎から発信される本展は、戦争を過去の出来事としてではなく、現代に生きる私たちが向き合うべき問題として捉え直す契機となるだろう。
【開催情報】
展覧会名:ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた
会期:2025年7月19日(土)~9月7日(日)
会場:長崎県美術館 企画展示室、常設展示室第1室
開館時間:10:00~20:00(最終入場19:30)
休館日:8月25日(月)
観覧料:一般1,500円(1,300円)、大学生・70歳以上1,300円(1,100円)、高校生以下無料
※( )内は前売りおよび15名以上の団体料金
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、障害福祉サービス受給者証、地域相談支援受給者証、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)医療受給者証、先天性血液凝固因子障害等医療受給者証、小児慢性特定疾病医療受給者証の提示者および介護者1名は5割減額
URL:https://www.nagasaki-museum.jp/archives/exhibition_post/21818