被爆80周年記念、広島市現代美術館で「記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」開催中
本展は、戦争や原爆の「記憶」と、美術作品をはじめとする「物」との関係をテーマに、過去と現在をつなぐ試みを紹介する。

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」展示風景 Photo: Kenichi Hanada

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」展示風景 Photo: Kenichi Hanada

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」展示風景 Photo: Kenichi Hanada

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」展示風景 Photo: Kenichi Hanada

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」展示風景 Photo: Kenichi Hanada
会場が位置する比治山には、かつて加藤友三郎像が建てられていた。本展では、その像を制作した作り手や、戦後に再建された複数の加藤友三郎像を取り上げ、記憶が形成され、忘れられ、そして再構成されてきた過程を提示する。
展示は三つの視点から構成される。
比治山の空の台座から
広島市現代美術館すぐそばに残る台座と、かつてそこに設置されていた《加藤友三郎元帥銅像》(1935年、上田直次)のほか、その作者による現存する作品や、今世紀に入って再建された加藤友三郎像の事例を紹介する。出品作家は上田直次、吉田正浪、青山三郎。

上田直次《加藤友三郎元帥銅像》1935
過去との対話
モニュメントやアーカイブを介して記憶の形成をテーマとした現代作家の作品を展示。出品作家(招聘アーティスト)は黒田大スケ、毒山凡太朗、蔦谷楽、フィオナ・アムンゼン、小森はるか+瀬尾夏美が参加する。

黒田大スケ《自由の女神について》2022 ©Daisuke Kuroda

毒山凡太朗《令和之桜│Reiwa Cherry Blossoms -75 years After WW II 》 2020 ©Bontaro Dokuyama, Photo by Kenji Morita, Courtesy of LEESAYA
広島現美コレクションより
戦争や原爆をテーマに収集してきた所蔵品から、丹下健三、イサム・ノグチ、島州一、殿敷侃、丸木俊+丸木位里、曺 徳鉉、ヘンリー・ムーアらの作品を紹介する。

丹下健三《広島平和記念公園模型》(1/300縮尺)1950/2015
会期中には、8月23日の学芸員による展示解説や、毎週土日祝にアートナビゲーターによるツアー形式の展示解説など、関連プログラムも予定されている。
被爆から80年という節目に、記憶と物との関係を問い直す本展は、見る者に過去との対話を促し、現在を考える契機をもたらすだろう。
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【出品作家について(招聘アーティスト)】
黒田大スケ(1982年、京都生まれ)
広島市立大学大学院博士後期課程修了。彫刻家。近代以降の彫刻や制作行為そのものを題材に、パフォーマンス性の強い映像や立体作品を制作している。近年は「天幕のための」シリーズを展開し、国内外で発表。2024年には第7回昌原彫刻ビエンナーレ(韓国)などに参加。
毒山凡太朗(1984年、福島生まれ)
東京を拠点に活動。東日本大震災と原発事故をきっかけに、失われた故郷や記憶をテーマとした映像・インスタレーションを制作。現代社会で見えにくくなっている事象を調査し、寓話的要素を交えて作品化する。2024年には無人島プロダクションやLEESAYAで個展を開催。
蔦谷楽(1974年、東京生まれ)
ニューヨーク州クイーンズ在住。戦争や核時代に抑圧された歴史や記憶をリサーチし、写真や映像で表現。事実や記憶を再構築する作品を制作している。近年は2023年の原爆の図丸木美術館での展示や、ニューヨーク・Gallery Ulteriorでの個展を開催。
フィオナ・アムンゼン(1973年、ニュージーランド生まれ)
オークランド在住。オークランド工科大学准教授。戦争や社会的出来事が残す痕跡と、その影響が現在にどう現れるかをテーマに、写真や映像を通して探求している。近年はメルボルンや東京ビエンナーレなど国際的に活動。
小森はるか+瀬尾夏美
2011年の東日本大震災をきっかけに結成。岩手県陸前高田市を拠点に、土地や人々の記憶を映像や文章で記録・発表。フィールドワークを通じて制作と対話の場を生み出している。近年は各地の美術館やアートプロジェクトに参加し、地域と深く関わる活動を続けている。
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【開催情報】
展覧会名:被爆 80 周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―
会期:2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝)
会場:広島市現代美術館 B展示室
開館時間:10:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし8/11、9/15は開館)、8/12
観覧料:一般1,600円(前売1,250円)、大学生1,200円(前売900円)、高校生・65歳以上800円(前売600円)、中学生以下無料
※()内は前売りおよび 30 名以上の団体料金
主催:広島市現代美術館
後援:広島県、広島市教育委員会、中国新聞社ほか
URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/memoriesandobjects