ウィーンの美と生活文化をたどる展覧会「ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末」、10/4(土)からパナソニック汐留美術館で開催
本展は、19世紀前半のビーダーマイヤー様式と、20世紀初頭のウィーン世紀末という、ウィーンの生活文化における二つの輝かしい時代を紹介する。銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、家具、ドレスなど、生活に根ざしたデザイン約270点が一堂に会する。
会場構成は全4章で構成され、それぞれの時代や表現、造形美に着目して、ウィーン・スタイルの多面的な魅力に迫る。本展のみどころを章ごとに紹介したい。
第1章:ビーダーマイヤー
19世紀前半、ビーダーマイヤー様式の工芸は、抑制のきいた造形と丁寧な手仕事によって、日常の美を形にしていた。政治的抑圧のなか、人々は家庭という私的空間に安らぎと理想を見出し、そこに寄り添うようにして、実用性と温かみを兼ね備えた家具や器物が生まれていった。

《椅子》 1820年頃 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ©Asenbaum Photo Archive

ヤーコブ・クラウタウアー《ティーポット》 1802年 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection , ©Asenbaum Photo Archive

ウィーン磁器工房 《カップアンドソーサー》 1818年 S.J.パッツル・コレクション S.J.Patzl Collection, ©Asenbaum Photo Archive, Fotografen: Birgit und Peter Kainz
幾何学的なフォルムと温かみを併せ持つこれらの作品からは、抑制の美と手仕事の誠実さが伝わってくる。
第2章:「総合芸術」、二つの時代
19世紀のビーダーマイヤー作品と20世紀のウィーン工房作品を並置し、その造形的な連続性を探る。たとえば、約100年を隔てた《キャセロール鍋》(1807年)と《グラーッシュ用の皿》(1907年)、《サモワール》(1838年)と《センターピース》(1924-25年)。

左: アントン・ケル《キャセロール鍋》 1807年 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ©Asenbaum Photo Archive 右: ヨーゼフ・ホフマン《グラーッシュ用の皿》 1907年 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ©Asenbaum Photo Archive

左:《サモワール》 1838年 アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection, ©Asenbaum Photo Archive, Fotografen: Birgit und Peter Kainz 右: ヨーゼフ・ホフマン《センターピース》 1924-25年 ギャラリー イヴ・マコー協力 Courtesy Gallery Yves Macaux, ©Yves Macaux
素材と技術の確かさ、そして生活に根ざした造形への志向が、時代を越えて共鳴していることがわかる。
第3章:ウィーン世紀末とウィーン工房
ウィーン世紀末では、都市生活と芸術の融合を志したウィーン工房の活動が展開された。家具から衣服、装飾品に至るまで、生活全体を包み込むモダンデザインが誕生した。

コロマン・モーザー《アームチェア》 1903年頃 豊田市美術館

左: ヨーゼフ・ホフマン(器デザイン)、マリア・リカルツ(装飾)《ボックス》 右: ヨーゼフ・ホフマン(器デザイン)、マリア・リカルツ(装飾)《花器》 1920年頃 エルンスト・プロイル・コレクション Ernst Ploil Collection, ©Foto: Leopold Museum, Wien
生活を美しく変革しようとしたその精神は、女性アーティストたちの繊細で装飾的な作品にも見て取れる。
第4章:ウィーン・エコーズ
ウィーン・スタイルは、世紀末ウィーンを越えてもなお多様な作家によって受け継がれている。たとえば、ルーシー・リーの《ピンク線文鉢》や、フェリーチェ・リックス(上野リチ)の《七宝飾箱「馬のサーカスⅠ」》が挙げられる。

ルーシー・リー《ピンク線文鉢》 1970年代後半 個人蔵 Private Collection, Estate of the Artist 撮影:大屋孝雄

フェリーチェ・リックス(上野リチ) 《七宝飾箱「馬のサーカスⅠ」》 1950年頃(1987年再制作) 京都国立近代美術館
機能美と詩情をあわせもつその表現は、現代における生活芸術のあり方を静かに問いかける。
日常に宿る美しさに目を向けるために、ウィーンという都市が紡いだ装飾と実用のかたち。その静かな余韻を、ぜひ会場で確かめてほしい。
【開催情報】
展覧会名:ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り
会期:2025年10月4日(土)〜12月17日(水)
※会期中、一部展示替えを行う。前期:10月4日〜11月11日、後期:11月13日〜12月17日。
11月13日以降に再入場する場合は、半券の提示により100円割引となる。
会場:パナソニック汐留美術館
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)※夜間開館日あり
休館日:水曜日(ただし12月17日は開館)
観覧料:一般1,500円、65歳以上1,400円、大学生・高校生1,000円、中学生以下無料
※土・日・祝日は日時指定予約が必要。平日は予約不要。当日に空きがある場合は入館可能。
混雑状況により入館方法が変更となる場合がある。
公式サイト:https://panasonic.co.jp/ew/museum/
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