タカ・イシイギャラリー 前橋にて、クサナギシンペイ個展「鯨寄る浦虎伏す野辺」を開催
いかなる鯨の寄る浦、虎ふす野辺をふみわけ、草村の露ときえんも此道也
『慶長見聞集』(1614)二
この『慶長見聞集』の一節には、未開の地を切り拓くような作家の心境とこれからに向けた強い志が感じられる。同時に、遥かな時と場所を連想させ、作家が描く荒々しくも静かな広大な自然の風景とも重なるようだ。
紙作品のシリーズは、アトリエに通うことが困難な時期に日記のように描きためていた作品群の中から初めて展示する。紙の上で軽やかに結実するにじみの実践が、繊細かつ純朴な空気感を生み出す。生のカンヴァスにステイン(にじみ)の技法を用いて制作されるペインティング作品は、透明感のある豊かな色彩を何層にも重ね、深い空間性を表現。近年、クサナギの絵画は、このステインの技法を基調としながら、即興的で動きのあるブラッシュストロークや、豊かな色彩表現が印象的な抽象絵画へと展開してきた。洗練された色彩の調和とダイナミックな構図からなる神秘的な様相は、クサナギの新しい抽象表現の幅を広げている。
Shinpei Kusanagi
“2024/04/27”, 2024
Pigment on paper
25 x 18 cm
© Shinpei Kusanagi / Photo: Kenji Takahashi
Shinpei Kusanagi
“2024/04/24”, 2024
Pigment on paper
25.3 x 19 cm
© Shinpei Kusanagi / Photo: Kenji Takahashi
クサナギシンペイ
1973 年東京生まれ、同地を拠点に活動。主な個展に「All things must pass」アルトマ ンシーゲルギャラリー(サンフランシスコ、2022 年)、「Something is happening which is not happening at all」アルトマンシーゲルギャラリー(オンライン、サンフランシスコ、2020年)、「project N 45 クサナギ シンペイ展」東京オペラシティ アートギャラリー(東京、2011年)など。グループ展では「MOT コレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020」東京都現代美術館(東京、2023 年)、「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18 人の画家」広島市現代美術館(広島、2023 年)、東京オペラシティ アートギャラリー(東京、2024 年)、熊本市現代美術館(熊本、2024 年)に巡回、MOT サテライト「往来往来」(東京、2017 年)、「現代美術の展望:VOCA 展2011-新しい平面の作家たちー」上野の森美術館(東京、2011年)に出展。書籍の装丁画などを数多く手がけ、2013 年求龍堂より画文集『清澄界隈』を出版。
クサナギシンペイの個展「鯨寄る浦虎伏す野辺」
会場:タカ・イシイギャラリー 前橋
住所:〒371-0022 群馬県前橋市千代田町5-9-1
営業時間: 11:00 – 19:00 定休日: 月・火・祝祭日
公式サイト
Instagram:@takaishiigallery