ウィリアム・モンク日本初個展「Noon Day Night」、Pace 東京でひらく静かな異世界
クラシックな映画やサイケデリック・ロック、自身の体験、無意識の中に蓄積されたイメージ。そうした要素を背景に、モンクは超現実的で半抽象的な絵画を生み出してきた。鮮やかでミステリアスな作品は、記憶や感情に触れながら、絵画というメディウムが持つ美術史的な蓄積とも結びついている。
展覧会タイトル「Noon Day Night」は、昼の空が激しい嵐や火山灰、大気中の微粒子、日食などによって暗くなる気象現象に由来する。時間を超越したような不思議な感覚を含む言葉であり、本展に並ぶ作品群にも、完全に現実的でも空想的でもない風景や建築的な要素が描かれる。

William Monk, Sol Increased (son of nowhere) III, 2021-2026, © William Monk, courtesy the artist and Pace Gallery
作品に繰り返し現れるのは、色とりどりの柱、煙の輪、薄暗い岩山、そして境界や通過地点を見守る番人のような人物だ。そこには、肉体的な世界と精神的な世界の境界が曖昧に開かれ、互いに浸透し合うとされるケルト文化の「薄い場所(Thin Places)」の感覚も重なる。モンクは薄く溶いた色の層を幾重にも重ね、時間をかけて乾燥させながら複雑な色合いをつくり出す。そのプロセスを通して、鑑賞者を記憶や無意識の領域へと少しずつ導いていく。
「Noon Day Night」の作品群は、2024年にマヨルカ島のノイエンドルフ・ハウスで行われた1ヶ月のレジデンシーや、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の『情事(L’Avventura)』、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』などに暗示的に触れている。ただし、特定の物語とのつながりは回避されている。モンク自身は、これらの絵画について「映画における状況説明のための一連のシーンのようなもの」だと語っている。

William Monk,Sentinel IV, 2025, © William Monk, courtesy the artist and Pace Gallery

William Monk, Untitled (Smoke Ring Mountain), 2021,© William Monk, courtesy the artist and Pace Gallery
《Stem I》(2024-25年)や《Sentinel IV》(2025年)では、番人は全身像として描かれ、キャンバス上で展開される幻想的なロールシャッハ・テストの軸のような役割を果たす。一方、《Underworld (sentinel I)》(2025年)では、番人は地中海の風景を思わせるサボテンの茂みや岩の峰によって覆い隠され、死という領域への精霊的な案内人としての気配を帯びる。
また、《Cactus Garden II》(2025年)では、ブロック状のフォルムが画面の周縁を構成するのに対し、《Sol Increased (son of nowhere) III》(2021-26年)では、そのフォルムが聳え立つ柱群へと変化する。霧がかったグレー、ピンク、紫の色調は、鮮やかな赤、オレンジ、青へと展開し、モンクの内的世界へと視線を誘う。
プロフィール
ウィリアム・モンク(William Monk)
1977年に英国・キングストン・アポン・テムズで生まれたアーティスト。空間的な演出性を持つ作品で知られ、豊かな絵画の歴史に根ざしながら、大胆に分割された構図と鮮やかな色彩によって、不可思議な絵画空間を描いてきた。作品の多くは、時間をかけて展開されるシリーズとして発表されている。
モンクは2005年にオランダ王立絵画賞、2009年にジェルウッド現代画家賞を受賞。アジアにおける初めての美術館個展「ウィリアム・モンク:サイコポンプ」は、2024年1月に龍美術館(中国・上海)を皮切りに、同年、四方当代美術館(中国・南京)、和美術館(中国・順徳)へ巡回した。主な展示歴に、フリース美術館、ファン・ゴッホ美術館、プロジェクト・スペース・リーズ、サマーフィールド・ギャラリー、ノリッジ芸術大学、デン・ハーグ市立美術館など。作品は、ブレナム宮殿、和美術館、現代美術研究所(マイアミ)、龍美術館、ボストン美術館など、世界各地の公的機関に収蔵されている。
Instagram:@_william_monk_
開催情報
William Monk: Noon Day Night/ウィリアム・モンク: 「Noon Day Night」
会期:2026年6月30日(火)– 8月16日(日)
会場:Pace ギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門 5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ A 1-2階
開館時間:11:00~20:00
(日曜は18:00〜20:00、それ以外は19:00〜20:00でアポイントメント制)
休館日:月曜日
観覧料:無料
ウェブサイト:https://www.pacegallery.com/galleries/tokyo/
Instagram:@pacegallery