服部恭平個展「ねぇ」、オレンジの光に呼びかけられる親密なまなざし
6×7の中判カメラで捉えた日常の情景や女性たちのポートレート、アトリエの机上や窓辺のオブジェ、移動中のスナップが、あたたかなオレンジ色の光に包まれて立ち上がる。誌面連載『写真』vol.7(ふげん社、2025)掲載作を基点に、作家が“心が動いた瞬間”にだけシャッターを切るという姿勢が、静かな余韻とともに会場に満ちる展覧会だ。


本展の核にあるのは、写真と“自然体”で向き合う行為そのものだという。服部は一貫してフィルムを用いて作品を制作してきた。それは、自分にとって写真と向き合う心地よい方法だと語る。自然体で写真に関わろうとする姿勢からは、写真への信頼と、美しさや豊かさを分かち合おうとするまなざしが伝わってくる。
オレンジの灯りに滲む室内の視線や街の夕景、アトリエのデスクや窓辺に置かれたオブジェ、タイトル「ねぇ」と呼応する親密な温度が漂う。言葉を重ねるとこぼれてしまいそうな、その瞬間のきらめきが静かに伝わってくる。



オレンジ色の光に誘われるように、言葉になる前の気配がふっと浮かび上がる。その刹那を覗き込むとき、写真のやさしさと揺るぎない眼差しが、あなたの記憶のどこかをそっと揺らすはずだ。
※掲載写真すべて © Kyohei Hattori
【プロフィール】
服部恭平(Kyohei Hattori)
1991年大阪府茨木市生まれ、東京在住の写真家。2018年より写真制作を開始。2025年に服部恭平写真事務所を設立。フィルムを用いた制作で、変わりゆく日常から私的なイメージを切り出す。
主な個展に『2019-2020』(BOOKMARC、2020)、『バコン』(haku kyoto / 229、2024)、『Through the lens of Kyohei Hattori』(agnès b. Shibuya & KyotoBAL、2024)。
kyoheihattori.com
【開催情報】
展覧会名:服部恭平個展「ねぇ」
会期:2025年9月5日(金)〜9月28日(日)
会場:ふげん社(〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12)
開館時間:火〜金 12:00〜19:00/土・日 12:00〜18:00
休廊日:月曜、祝日(9月15日・23日)
観覧料:無料
URL:https://fugensha.jp/
Instagram :https://www.instagram.com/fugensha/