The Massにて11/18(土)〜1/21(日)までアーティストデュオNerholによる新作展「REVERBERATION」を開催
本展では近年Nerholの2人が継続的に取組んでいる帰化植物をテーマにしたシリーズを中心とした新作を発表する。
飯田竜太と田中義久の2人からなるNerhol(ネルホル)は、主に彫刻を行う飯田と、支持体となる紙や平面的構成に向き合う田中、両者の行為の融合によって作品を制作している。Nerholは特定のモチーフの連続写真を何枚も物理的に積み重ね、それを彫刻し、出来上がった1つの作品によってそこに内包される重層的な時間と瞬間を語る。そこに込められた時間や歴史の層に対し作品化するという彼らの試みは、他に類を見ない新しい物理的な形態と視覚的な美意識を纏い作品としてアウトプットされてきた。
本展にてNerholが発表する作品群のテーマとなっている帰化植物とは、本来の自生地から人間活動を含む様々な要因によって他の地域へ運ばれ、やがてその土地で野生化した植物のことを指す。そこにはその植物やその植物を運んだ何か、またはその因果を作った人間の活動の歴史が存在するが、まさにそこに介在する時間や歴史という概念こそNerhol作品に通底する欠かせないコンセプトである。
Nerholはどの作品においてもそういった時間の集積を紙の束に置き換え、彫刻をすることでそこに内包される「何か」を露わにしてきた。画面には飯田の身体性と田中の思考性が伴われ、それらは2人が繰り返し行う「対話」という行為によってその密度を高めてきたと言える。言わばNerholの2人にとって「対話」という行為は既に作品制作の一部であり、むしろその中枢とすら言えるのだ。
本展で発表される帰化植物作品はNerholが近年制作を続けてきたシリーズの1つであり、私たちが普段何気なく目にするものを再び意識させ、そこに向き合う時間を与えてくれる作品群となるだろう。
私たちとは全く異なった時間軸の中で歴史的に生き残ってきた帰化植物は生命力と環境への適応力に溢れ、逞しさと美しさを湛えている。
写真でもあり、彫刻でもある。
瞬間でもあり、歴史でもある。
それらの要素のあわいに存在するNerhol作品は、様々な問いと挑戦に溢れ、普遍的なテーマを扱いながらも常に新しい表現を求めてきた。それは美術の本質に迫る行為そのものであると言えるだろう。
柔軟性や多様性、他者への理解が必要とされる対話という行為を繰り返しながら作品を生み出していくその形式こそがNerholのアートであり、現代社会においてそのような芸術活動が重要な行為であるように思えてならない。
Nerhol
Nerhol(ネルホル)は、飯田竜太と田中義久の二人からなるアーティストデュオ。それぞれの活動を展開していた二人は、現代においていかにして問題を提起し、人に伝えていくかという方法論において共通項を見出し、2007年よりNerholとして活動を開始する。書物やそこに印された文字、世界に存在する図像の定型を異化するような探求にはじまり、2011年からは数分間かけて200カット以上撮影をした全て異なるポートレートを束ねて彫刻することで生み出される歪んだ人物像の立体作品を発表し、大きな注目を集める。その後、国内外の美術館やギャラリーの展覧会への参加を重ねるなか、街路樹、動物、水、あるいはネット空間にアップされた画像データや記録映像等、様々なモチーフを選びながら、それらが孕む時間軸さえ歪ませるような作品を制作。そこでは一貫して、私たちが日常生活を過ごすときには見落とされがちな有機物が孕む多層的な存在態を解き明かすことを試みている。
主な個展に「Affect」(第一生命ギャラリー/M5Gallery、東京、2023年)、「critical plane」(Yutaka Kikutake Gallery、東京、2021年)、「Interview Portrait House and Room」
(Youngeun Museum of Contemporary Art、韓国、2017年)、「Promenade」(金沢21世紀美術館、石川、2016年)、「Index」(Foam Museum、アムステルダム、2015年)など。主なグループ展に「第八次椿会 ツバキカイ8このあたらしい世界/このあたらしい世界2nd SEASON “QUEST”」(資生堂ギャラリー、東京、2021年/2022年)、「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」(埼玉県立近代美術館、2020年)、「VOCA展2020現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2020年)、「めぐるりアート静岡」(静岡市美術館、2017年)など。主な受賞歴にVOCA賞(2020年)がある。
飯田は、1981年静岡県生まれ。2004年日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業、2014年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。現在は東京を拠点にしている。田中は、1980年静岡県生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科を卒業後、現在は慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程在学中。東京を拠点に活動を続ける。
INFORMATION
展覧会名 :Nerhol「REVERBERATION」
会期:2023年11月18日(土)〜2023年12月26日(火)
12月25日(月)、26日(火)特別開廊
※2024年1月6日(土)〜1月21日(日)
住所 :〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-11-1
開廊時間 :12:00〜19:00
*休廊日 月曜日、火曜日
Website:http://themass.jp
Instagram:@themass