NEW AUCTIONが第5回目アートオークション 『NEW 005』を2023年11月4日(土)に開催
第5回目の開催となるオークション『NEW 005』では、60年以上にわたり現代美術の第一 線で活躍するデイヴィッド・ホックニーの版画コレクションや、様々なメディアやジャンルを 横 断 し ブ ラ ッ ク ネ ス の 複 雑 な 文脈を表現することで知られるシアスター・ゲイツの立体作品、国立新美術館とサンローランの共催による大規模な個展で注目を集めた蔡國強(ツァイ・グオチャン) の「火薬絵画 」など国内外から多くの貴重な作品が 出品される。またビーター・ヴォーコスの陶磁器作品や国内で初めての出品となるアントニー・ゴームリーの彫刻作品など幅広い幅広いカテゴリーの良作が取り揃っているのも『NEW 005』の特徴である。
渋谷MIYASHITA PARKにある「SAI」にて開催されるオークションプレビューでは全ての出品作品を実際に鑑賞できる。 また今回のオークションは、原宿から場所を移し、プレビューと同じく「SAI」にて開催する。
●主な出品作品
David Hockney (デイヴィッド・ホックニー) / Gehard Richter (ゲルハルト・リヒター) Antony Gormley (アントニー・ゴームリー) / Theaster Gates (シアスター・ゲイツ)/ Blinky Palermo (ブリンキー・パレルモ) / Ana Park (アナ・パーク) / 蔡國強(ツァイ・ グオチャン) /戸谷成雄/横尾忠則/名和晃平/Mr./ロッカクアヤコ/ハロシ/
西 祐佳里 / 友沢 こたお etc…
「NEW 005」
プレビュー
会期:2023年10月28日(土)- 11月3日(金)
時間:11:00 – 20:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:SAI
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
オークション
会期:2023年11月4日(土)
時間:START 14:00 – (OPEN 13:00- )
会場:SAI
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
David HOCKNEY, 1937-
デイヴィッド•ホックニー
イングランド北部の都市、ブラッドフォード出身のデイヴィッド•ホックニー (1937-) は、1960 年代以降、イギリスのポップアートを牽引してきたアーティストの一人である。1964 年にアメリカ西海岸に拠点を移してからは、ロサンゼルスを彷彿とさせる《The Splash》(1966) にあるような「水」の作品などが最も代表的なものとして挙げられる。彼の作品に一貫して見られるイメージメイキングは、これまでにさまざまなミディアムを通して表現されてきたが、その中でも版画はホックニーのキャリアを語るうえで、欠かせないミディアムのひとつであろう。学生時代は自ら版画を制作していたが、1970 年代頃には刷り師らと共に版画を発表するようになる。
《Lithographic Water Made of Lines》シリーズは、1978 年から 80 年にかけて版画工房タイラー•グラフィックスより発表されたリトグラフ版画である。シンプルな線とドットのマークメイキングを通して特徴的に日常の視覚要素を捉えた《Lithographic Water Made of Lines》に対し、《Lithographic Water Made of Lines and Crayon》では、クレヨン素材の質感を忠実に再現するリトグラフ技法の特性を用いることで、陽の光が燦々と降り注ぐ水面に新たなテクスチャーの層を加えている。単調な色合いながらも、彼のライフワークとも言える「マークメイキング」は、風景中にある視覚のコントラストを見事に表現している。
Theaster GATES, 1973-
シアスター•ゲイツ
シアスター•ゲイツ (1973-) は、社会との関わりに深く根ざした作品を制作するアメリカ人アーティストである。
ゲイツの芸術実践は陶芸、彫刻、パフォーマンス、インスタレーション、アーカイビング、都市空間における建築物のインターベンションや大規模な社会プロジェクトにおよび、アフリカ系アメリカ人の文化や体験にまつわる背景や歴史を扱うことが多い。ゲイツは、これまでにワシントン•ナショナル•ギャラリー ( ワシントン D.C.)、パレ•ド•トーキョー ( パリ )、ホワイトチャペル•ギャラリー ( ロンドン )、ドクメンタ 13、国際芸術祭「あいち 2022」など、世界中の美術館やギャラリーで作品を展示している。
木製のナイトテーブルを再利用し、タールで黒く塗り重ねた彫刻作品の本作品《Night Stand for Soul Sister》には、作品の一部として、物議を醸した一冊の本、グレース•ハルセル著『Soul Sister ( 黒い肌は知った )』が添えられている。『So ul Sister』は、ハーレムとミシシッピで黒人女性としての日常を体験するために肌を黒くした白人ジャーナリストの物語である。この本が出版された 1969 年は、公民権運動によってアメリカにおける人種差別が撤廃された翌年のことで、他の多くの作品と同様に、ゲイツは本作でもアフリカ系アメリカ人としての経験や歴史へと直接言及している。本の表紙を覆う暗い色は、ナイトスタンドを覆うタールの粘性のある光沢と対照的に写り、上述の白人ジャーナリストの黒塗りした顔と、タールで黒く塗られた白い木製ナイトスタンドとを結び付けている。タールは、シカゴのサウス•サイドでタール屋根の職人として働いていた亡き父への敬意を込め、ゲイツがしばしば作品中に取り入れる素材である。同素材はゲイツにとっての父の象徴であると同時に、都市産業におけるブラックの労働者としての役割を象徴するものである。本作品は、アメリカに蔓延る人種的そして政治的背景に対する力強いメッセージを発しており、鑑賞する者に、展示物に内在する重曹的な意味合いや含意とじっくり向き合うように促しているのである。
Peter VOULKOS, 1924-2002
ピーター•ヴォーコス
ギリシャ系アメリカ人アーティストのピーター•ヴォーコス (1924-2002) は、アメリカ陶芸界で最も影響を与えた人物の一人とされ、そのモニュメンタルな抽象彫刻は、工芸品としての陶芸をファイン•アートの領域へと幅を広げることで陶芸の認識を再定義した。ヴォーコスはまた、ロサンゼルス•カウンティ•アート•インスティテュートとカリフォルニア大学バークレー校で陶芸を教え、陶芸科を設立した。
ヴォーコスは、商業陶芸家としてポットや皿といった機能性のある器を長年制作した後、ノースカロライナ州のブラック•マウンテン•カレッジで 3 週間の夏期コースを教える機会をえる。そして、このコース中に彼は、ヨゼフ•アルバース、ロバート•ラウシェンバーグ、マース•カニングハム、ジョン•ケージといった人物らを紹介され、後に当時の抽象表現主義を代表するアーティストらと関係を築いていくこととなる。この出会いは、ヴォーコスのその後の作風の軌跡へと大いなる影響を及ぼし、彼はルールや伝統に縛られない、表現的で彫刻的なメディウムとして粘土を扱うようになり、その作風を永遠に変えることとなる。熱狂的なエネルギーに満ち溢れたヴォーコスの作品は、粘土を引き裂き、叩き、切り、 えぐる、という手順を踏み穴窯で焼成することで、制作過程におけるダイナミズムを内包している。彼の抽象的で巨大な 陶芸は、実用的な機能をすべて失うことで、粘土からできた抽象彫刻へとその姿を変えたのである。生前には、しばしば学生のためにワークショップを開催してきたヴォーコス。彼のまるでパフォーマンスを思わせるエネルギッシュな制作過程は、後世の陶芸作家たちに大いなるインスピレーションを与えた。
本作品は、1995 年に制作された皿で、日本の楽焼に倣った薪窯で焼かれている。1980 年代以降、ヴォーコスは小ぶりな器や皿など、ろくろを使った制作を再開する。本作品は、その形状から皿であることは認識できるが、裂かれた塊、不揃いな形、ひび割れた表面からは、大作と同様のエネルギーが感じられる。
Antony GORMLEY, 1950-
アントニー•ゴームリー
アントニー•ゴームリー は、ブロンズによる身体表現で有名なイギ リスの彫刻家である。作家自身の身体を彫刻化することで、身体と空間の 複雑な関係性や、外的な身体と内的な心の繋がりを探求する。2009 年に開 始した《MEME ( ミーム )》シリーズでは、33 体の異なる身体の姿勢を模して デザインされた小さなブロンズ彫刻を発表。生物学的な身体の形状を角張 ったブロックに変換し、人間の身体を「身体容器」という建築言語に置き 換えることで、彫刻を身体の住居という概念に結びつけ、彫刻と彫刻が置 かれる空間との関係を具現化させる。ブロック状の作品群は、全体像を見 渡せるように小さく作られ、観る者に建築形態の彫刻と自身の身体との関係を考察させる。
ミーム論と文化的インターネット現象の研究にちなんだ本作品のタイトルとなった「meme」とは、ある個人から別の個人へと伝達され、最終的に は自己複製し、文化の要求に応じて変異する形態であるとゴームリーは述べる。このタイトルは、鑑賞者が自分の文化的レンズの中で姿勢やポーズ を解釈し、身体との個人的な関係を明らかにするよう促すものである。背を丸めた胎児のようにも見える《MEME CCC》のポーズは、安全、再生、好機を想起させる。
CAI Guo-Qiang,1957 –
蔡 國強 ( ツァイ•グオチャン)
今夏、国立新美術館で開催された大規模な個展「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」で記憶に新しい現代美術家の蔡國強 (1957-)。中国の泉州に生まれた蔡は、銃声や火花が多く飛び交う抗議活動が激しかった文化大革命を経験した。火薬とコントロールされた爆発技術を取り入れた革新的な作品で知られ、最も代表的なものとして、火薬を仕掛けた巨大な風船で吊るした高さ 500 メートルもの梯子を点火した《Sky Ladder》(2015) などが挙げられる。
蔡は、1986 年から 95 年まで日本に滞在していた経験があり、代名詞とも言える「火薬」を用いた表現方法が定着したのは、この頃の経験が大きく、1991 年には P3 art and environment にて、ビッグバンを意味する「原初火球 : The Project for Projects」と題した展覧会を開催。1993 年には《龍脈/万里の長城を 1 万メートル延長するプロジェクト : Project for Extraterrestrials No.10》で万里の長城の最西端の関所、中国嘉峪関から 1 万メートルの炎と硝煙の長城を出現させた。 本作品《龍之二十九》は、日本滞在期である 1993 年に制作された初期の火薬ドローイング作品である。爆発が導き出す偶発的な成り行きへと着眼を置き、その中にある破壊と創造の両義的な関係性の中に美を見出す。この現在にも一貫する蔡の芸術的実践におけるその若き探究心は、燃えつきた火薬の跡とともに染みついている。