アリシア・クワデ「La Pêche miraculeuse」がPace 東京で開催、新作彫刻や紙作品を発表
展覧会タイトル「La Pêche miraculeuse」は、コンラート・ヴィッツが1444年に描いた《The Miraculous Draught of Fishes》(奇跡の漁り)に由来する。フランス語の「pêche」には「漁」と「桃」という二つの意味があり、クワデはその言葉の重なりを通して、見慣れた物事に対する認識のずれに着目する。

Alicja Kwade, Tunnel-Tell (Ceci Sera Persicum) (detail), 2026 © Alicja Kwade, courtesy Pace Gallery

Alicja Kwade, PersicumAdustum, 2026 © Alicja Kwade, courtesy Pace Gallery
新作彫刻《PersicumMultiplex》と《PersicumAdustum》では、溝が刻まれた桃や、火の消えたタバコが突き刺さった桃をモチーフに、美しさと嫌悪感の境界を扱う。また、《Ad Idem Aliter》は、同じ石をガラスや大理石など異なる素材で表現し、鏡を介して配置する彫刻作品。3つ、5つ、7つ、10の要素からなる構成へと段階的に発展し、10月31日から11月1日に開催される「六本木アートナイト」の期間中、森美術館の前で完成形を迎える。その後、Pace 東京の屋外テラスに設置される。

Alicja Kwade, Tunnel-Tell (Ceci Sera), 2026 © Alicja Kwade, courtesy Pace Gallery

Alicja Kwade, Tunnel-Tell (Ceci Sera Persicum), 2026 © Alicja Kwade, courtesy Pace Gallery

Alicja Kwade, Strange Attractor, 2026 © Alicja Kwade, courtesy Pace Gallery
トンネルをモチーフとした《Tunnel-Tell (Ceci Sera)》と《Tunnel-Tell (Ceci Sera Persicum)》では、内側を鏡面仕上げにしたステンレス製の管が花崗岩を貫通する構造を採用。管の内部に広がる空洞と反射によって、空間の見え方が変化する。さらに、《Strange Attractor》シリーズからは、自然石と磨き上げられたステンレス製の要素を組み合わせた2点の彫刻を紹介する。
時間を主題とする作品も並ぶ。紙作品のシリーズ《Aperture Ø508》では、時計の針が描く円形の軌跡を通して時間の積み重なりを扱う。一方、動く壁時計を用いた彫刻《Gegen den Lauf》では、文字盤が秒針とは逆方向に回転し、前進と逆行が同時に生じる構造を取り入れている。
石や鏡、時計といった身近な物を用いながら、物質とイメージ、空間と時間の関係を探究してきたクワデ。本展では、素材の変容や反射、運動を通して、普段は意識されない知覚の仕組みに目を向ける。
プロフィール

Doro Zinn © Alicja Kwade
アリシア・クワデ(Alicja Kwade)
1979年、ポーランド・カトヴィツェ生まれ。ベルリンを拠点に活動。彫刻、インスタレーション、映像、写真など多様なメディアを用い、空間、時間、科学、哲学に関わる既存の概念を問い直す作品を制作している。石や鏡、時計などの日常的な物から、銅、鉄、リサイクル素材まで幅広い素材を扱い、物理世界と知覚の関係を探究する。
2017年には第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ「Viva Arte Viva」に参加。2019年にはメトロポリタン美術館の委嘱により《ParaPivot》を制作した。近年の主な展覧会に「Alicja Kwade: In Agnosie」(2023〜24年、レームブルック美術館)、「Alicja Kwade」(2024年、フォールリンデン美術館)、「Alicja Kwade: Pretopia」(2025年、大館当代美術館)など。作品はポンピドゥー・センター、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ルイジアナ近代美術館などに収蔵されている。
Instagram:@alicjakwade
開催情報
「La Pêche miraculeuse」
会期:2026年10月29日(木)〜12月25日(金)
会場:Pace ギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ A 1-2階
Instagram:@pacegallery