FEATURE

2019.07.08

人が着ることで完成する服。上田広大|vast222デザイナー

デイリーウェアをベースに、さまざまなジャンル、テイストを取り入れたカジュアルウェアを提案するファッションブランドvast222(バースト222)。今季より大阪から東京へと拠点を移したデザイナー、上田広大のアトリエを訪問した。

Profile

  • 上田広大(うえだ・こうだい)

    vast222デザイナー

    1990年大阪生まれ。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科卒業。アパレルメーカーを経て、ニシカワマサキヨ氏とともにKLASS ONEを設立。2016SSより「vast222」をスタートする。

もの作りとファッションへの目覚め

出身は東大阪。生駒山のふもとで、難波まで30〜40分ぐらいなんですが自然の多いところで育ちました。

小学校、中学校と私立で、片道1時間ぐらいかけて通ってたんで、学校終わってから皆と遊ぶ時間がないわけですよ。ひとりっ子やし、帰宅してからはひとりで遊ぶんですが、ゲームとかもそんなに買ってもらえるわけじゃないし飽きてくるから、自分でものを作る方向にいったんです。段ボールでおもちゃを作ったり、絵を描いたり……。いま思えば、もの自体というよりも、その仕組み、なんでそうなってるのか、どういうふうにできてるのかというところへの興味が強くて。たとえば言葉の成り立ちなんかも好きなんですよ。小学校の時にはじいちゃんにマイ広辞苑を買ってもらって読んでましたね(笑)。

中学では美術部に入ったんですが、そのころにはもう服に興味がありました。というのもオヤジが服好きなんです。スニーカー界隈ではちょっと有名な人で、「Alternate Sneakers(オルタネイトスニーカーズ)」っていうスニーカーのWEBサイトを20年以上続けているという。そんなこともあって家にファッション誌が結構あって、絵を描くときにはファッション誌を参考にすることも多くて。あと、ばあちゃんは洋裁ができて、自宅で刺繍の先生をやってたんで僕も教えてもらって、中学の終わりぐらいには古着のリメイクを自分でやったり。

当時からファションの仕事ってええなあと思っていたんですが、専門学校よりは大学に行きたいなと思ってて。親に「芸大に行きたいんやけど、学費が高いらしい。高校は公立に行くから大学も学費を出してくれ」と伝えて、公立高校を受験することにしました。それまではちょっとやんちゃな感じで内申点とかやばかったんですが、どうしても私服OKの学校に行きたかったんで猛勉強し、なんとか合格できました。そんなに勉強したのは人生で唯一です。

 

いちばん服を楽しんでいた高校時代

高校は服好きな子が多くて、仲間が増えました。当時まだ裏原全盛で、そのころはオヤジと服を共有してたんです。STÜSSY、Supreme、XLARGE、HECTIC……あとはMA1にスニーカー。たまに限定のアイテムを身につけていると声かけられたり。その時代がいちばん服を楽しんでましたね。ただ僕はこのブランドがすごい好きとか、憧れのデザイナーとか全然なくて。世代的にUNDERCOVER、N.HOOLYWOOD、NUMBER (N)INE、A BATHING APEとかも買って影響も受けてるなって思いますけど、憧れがあるかといわれればそうではないなと思います。

いま一緒にKLASS ONEという会社をやっているニシカワという相方がいるんですが、彼は高校の同級生で。当時はちょっとイモな感じだったんですが(笑)。KLASS ONEでは僕とニシカワがそれぞれ違う事業を手掛けていて、ニシカワは大阪で古着とセレクトのお店「VOLAR(ボラール)」をやっています。2人の財布は一緒なんですけど、やってる分野が違うから、持ちつ持たれつ、手伝えるとこだけ手伝うというスタンスです。お互いやってることが、多少分かんないぐらいがいいんですよ。それぞれの個性や考え方があって、それぞれの正義を押しつけあうと「お前に言われたない」ってケンカになるけど、分かんなかったら任せようってなるから。もちろん仕事のうえで討論することはあるんですけどね。

 

服作りのための、頭の使い方、手の使い方

大学は京都造形芸術大学の空間演出デザイン学科ファッションデザインコースに入りました。大学では技術を教えるような授業は少なくて、コンセプトの立て方とか考え方、頭の使い方を中心に教えられ、プレゼン力がつきましたね。

極論、服なんか学校行かんでも作れるんですよ。バラしたらわかるし、教本だっていくらでも売ってるし。僕の場合は友だちに素材費を出してもらって服をつくってあげてたんです。そしたらお金かからんと勉強できるじゃないですか。技術って言葉でどうこういうよりも、やるかやらんかだけなんで、だから僕は芸大に行ってよかったなって思います。

大学卒業後は大阪でアパレル会社に就職して、半年ぐらい店頭を経験してから企画や生産管理の仕事をしていました。で、就職すると作ることを辞めてしまう人って圧倒的に多いんですよ。仕事行って疲れて帰って寝て、服作りの時間がとれなくなり、それが怖いなって。だから自分を追いつめるため、大学卒業前に後輩とかを誘って半年後のグループ展を企画しておいたんです。そのイベントのタイミングで付けたブランド名が「vast」。まだうしろの「222」はついてないんですが。vastは「広大な」という意味で、僕の名前が広大なので……あまり深く考えて付けた名前ではないんですけど(笑)。

それからも仕事をしながらいろんなイベントに参加してたんですが、就職して1年ぐらいたったタイミングで相方のニシカワと再会して。古着屋をやりたいって考えてたニシカワと2人でイベントを企画し始めました。彼から繋がった人たちも巻き込んでいくことで、どんどんイベントが拡大して売り上げもたつようになって。仕事辞める前の1年間はほぼ休みなく、年間20数回もイベント出て、体壊しちゃうぐらいで。30歳ぐらいまでは仕事を続けて、いろんな関係性を築いてから独立するつもりだったんですけど、この感じなら「いけんちゃう?」って。25歳、就職して3年半ぐらいで独立しました。

 

コレクションテーマは、映画や音楽のタイトルから

当時のvastは女性の需要が高かったんですが、本当はメンズベースでやりたかったんで、メンズのコレクション形式で2016SSを作って東京で展示会をしたんです。ラッキーなことに東京のお店が1店舗決まって、メンズに絞ったのに受注会では半分ぐらい女の子が買ってくれて。そこで、パターンやサイズ感はメンズだけど、ユニセックスでも着られるという提案に切り替えたんです。最近は男性のお客さんの割合が増えたんですけど、それでも3〜4割は女の子ですね。

ちなみにvastに222がついたのはこのタイミング。222の由来は、一番分かりやすいところでいえば僕が平成2年2月22日生まれだということ。ほかにも、2という数字にいろいろゆかりがあって好きなんです。

カルチャー全般に影響を受けてますが、映画、音楽はとくに。vast222のコレクションテーマは、初期は映画のタイトルや、最近は音楽のアルバム名から持ってきています。映画だと『Footloose』『Memento』『Rain Man』『Elephant』『Last Days』、音楽だと『Quadrophenia』『Definitely Maybe』とか。その作品の内容というよりは、言葉そのものからイメージしてコレクションを作っています。

たとえば今季2019AWのコレクションテーマは、ザ・ストロークスのアルバム名からとった『IS THIS IT?』。vast222のロゴが入ったザ・普通のデザインだったり、有名ブランドの元ネタが入っていたり、それっぽいよねみたいなところを取り入れていたり、その上に「IS THIS IT? = これってそれ?」って皮肉を効かせたメッセージを入れています。僕自身は否定も肯定もしてないですが、分かりやすくてすごく着やすい服に対してアンチな人もいるっていうのも分かるから。今季は作ってて楽しかったし、いままでより一段上がれたかなって思えるコレクションになりました。

vast222 2019AW COLLECTIONより

 

人が着ることで完成する服が作りたい

vast222のブランドコンセプトとも関連するんですけど、服って着る人の生活やストーリーが付加しやすい道具やと思っています。ある種、器のようなものを作っているという感覚があって。魯山人じゃないですけど、器も料理を盛って完成するようなところがある。だからvast222では着るシーンを選ぶような服は作らず、日常的に着られる服を作っていきたいんです。

将来的な展望は具体的にはありませんが、ただ続けようって。続けることが大事やと思ってて。気合い入れるときもあるんですけど、無謀なことはしないようにと(笑)。辞めちゃうのはもったいないし、いままで良いと思っててくれてた人にも失礼やと思うし。ゆるい言い方するとライフワークっぽくなればええなって。

自分自身が有名になりたいって思いはないけど、ものを作るってことは世界中に自分の分身をばらまくようなこと。いってみればエゴですよね。だれかの人生に影響するという意味では服じゃなくても良かったけど、なるべく生活に近いものが良かった。こうやって向き合ってしゃべるのも楽しいし、生活や人が好きなんやと思う。

 

あなたにとってファションとは?

「仲のいい幼なじみ」

ずっと身近にいて、生活すべてに関係してくる。見えないところで支えになってくれるものだと思う。それを生み出せる仕事ってすごく素晴らしいことなんじゃないかなって。

 

その他のデザイナーインタビューはこちら

Recommend