QUI

2019
09.03
FEATURE

「原宿アート譜面商店vol.1」潜入レポート|UTILITY × 3人のアーティスト

原宿とんちゃん通りで、日々さまざまなアーティストやクリエイターが集うセレクトショップUTILITY(ユーティリティ)。店名の由来でもある「何でも屋」をコンセプトに、ストリートやモードといったカテゴリーにとらわれず、ウェアからアクセサリー、雑貨、オリジナル什器まで多彩なアイテムを展開している。そのUTILITYで2019年6月に行ったのが、「アートディグ」をコンセプトにしたレコード屋(風)イベント「原宿アート譜面商店vol.1」。QUIでは、このイベントに参加した3名のアーティストを取材した。

イラストレーター・世戸ヒロアキ

<Profile>

1990年福岡県生まれ。普遍的なうまさとトレンド感をまとったイラストレーションを描き、デビューして間もなくファッション誌『GQ』『MENS EX』『UOMO』や、トヨタ、ファミリーマートなどの企業キャンペーン、商業施設などのキービジュアルを手がけ注目を浴びる。現在は広告、店舗壁画、ライブペイント、ポートレートイベントなど活動の幅を広げている。2018年、アジア10ヶ国から200組以上のアーティストが参加する大阪発の国際アートフェア「UNKNOWN ASIA」では「Peach賞」「HOMES賞」をダブル受賞。

Instagram : https://www.instagram.com/setohiroaki_/

幼稚園時代から、時間があればずっと絵を描いていたというアーティスト・世戸ヒロアキさん。主にアメリカのアニメ専門チャンネル「カートゥーン ネットワーク」や、海外コミックの影響を受けて育ったそうだ。広告代理店での勤務経験を持ち、クリエイションにおける重要なことを学ぶうえでよい経験だったという。

プロフィールに目を通せば分かるように、若くして十分な実績を持つ世戸さんだが、彼のチャレンジはまだまだ続く。現在も新しいタッチに挑戦中とのことで、「原宿アート譜面商店vol.1」にはそのプロモーションも兼ねて参加したとのこと。ゲストの方々に無償で似顔絵を描き、完成した画像をその場でプレゼントしていた。

作品を作る際には、色とバランスを重要視しており、誰かが自分の作品を見たときに「世戸ヒロアキだ」と分かることを意識しているという。これからも世戸さんのさらなる挑戦と進化を追ってみたいと思う。

そのポップな世界観とは裏腹に、男女関係における修羅場とも言えるシーンが描かれている。解釈が正しいかは分からないが、皮肉の効いた毒のある描写と、ピノキオを彷彿させる長く伸びた鼻をもった人物イラストを照らし合わせると、「あぁ、そういうことか」と思わずニヤリとしてしまう。

 

イラストレーター・黒木仁史

<Profile>

1978年生まれ。大阪芸術大学 デザイン科卒業後、デハラユキノリ氏のアシスタントを経てフリーのイラストレーターに。『GQ JAPAN』、『POPEYE』などのファッション&カルチャー誌にイラストを提供するほか、ステラマッカートニーのファッションドローイングのショー、EDIFICEとのファッションポートレートイベントの参加など多岐にわたり活躍中。

Instagram : https://www.instagram.com/hitosh1kuroki/

大学時代から本格的に絵を描きはじめ、仕事では水彩画が中心とのことだが、プライベートでは実験的にアクリルやペンなどさまざまな絵画表現を試しているという黒木仁史さん。画材が少し変わるだけで、絵画の表現は大きく変わるが、彼がどの手法で描いた作品にも共通する味わい深さがにじんでいる。

イベントで展示されていたのは、黒木さんが描いた映画の名シーン。短絡的に考えると、絵画の方が実物の人間が演じる映画よりもリアリティに欠けるはずなのだが、不思議と彼が模写したシーンの方が、登場人物の想いや葛藤が映し出されているような気がしてならなかった。

カルチャーやファッションからインスピレーションを受けているという黒木さんだが、中でも若い頃レンタルビデオ店でアルバイトをしていた際に、とにかく無数の映画を観ていた経験が活きているということだった。

特に影響を受けた映画は、巨匠フランシス・コッポラの娘であるソフィア・コッポラが初のメガホンを握った『ヴァージン・スーサイズ(1999年・米)』。男性には理解しがたい、女性特有の感覚や言動に衝撃を受け、「観ていいのかな?」とドキドキしながら鑑賞していたという微笑ましいエピロードも聞くことができた。こうしたユニークかつ純粋な視点が、彼の作品に滲んだなんとも言えない表情を作り出しているのだろう。

最後に、黒木さんが水彩でもアクリルでもなく、遊びで描いているという線画のジンを見せてもらった。そこには、自転車に乗ったちょっぴりエロティックな女性のイラストが描かれており、まるで近所のお姉さんに憧れていた甘酸っぱい思春期に戻ったかのような感覚になった。まさに、「見ていいのかな」という感覚を追体験させてもらった。

 

刺繍アーテスト・二宮佐和子

<Profile>

1980年大分県出身。絵画、ファッション、インスタレーション、平面、立体、空間、とあらゆるものを糸と針で“縫い刺し”する刺繍アーティスト。企業とのコラボレーションによる商品開発、アートフェスティバルに参加するほか、ギャラリーやイベントで作品を発表、展示販売している。

2014年「SICF15」、2014年「シブカル祭。2014」、2015年「シブカル祭。2015」に参加。2015年、(株)フェリシモのプロジェクト「STITCH BY STITCH PROJECT」に参加し、インド オリッサ州で女性たちへ刺繍を教えはじめる。2016年(株)ロフトワーク主催「Make it Yourself #02 Make it Wappen!」にて高木耕一郎賞を受賞。2016年、寺田倉庫の地区開発プロジェクト「BUCKLE KOBO」にて作品展示、『GINZA』『装苑』での作品掲載ほか、TOKYO CULTUART by BEAMS、earth+gallery LUCK、等のグループショーに参加している。

Instagram : https://www.instagram.com/sawakoninomiya/

UTILITYに入った瞬間に、目を奪われたのが刺繍アーティスト二宮佐和子さんの作ったジャンパーだった。そのジャンパーの中央には、モザイクのようなデザインの刺繍が施され、存在感を放っている。近くで見ても、何をデザインしたのかは分からず、でも、どこかで見たことがあるようなそんな不思議なデザインだった。

そのジャンパーを見続けていると、二宮さんが「これ何のデザインか分かります?」と、クイズを出してくれた。

なんとか思い出そうと粘ってはみたが、やはり分からなかったので答えを求めてみると、電気グルーヴのアルバム3枚のデザインを分解してモザイク調に組み合わせたものだという。どうりで見たことがあるような気がしたわけだ。

電気グルーヴの名盤「A(エース)」というアルバムの1曲目に「かっこいいジャンパー」という曲があったので、実際にかっこいいジャンパーを作ってみたという。エンターテインメント性にあふれた発想と、遊び心をもった二宮さんらしいクリエイションだ。カルチャーへのリスペクトから生まれた大胆なオマージュと、繊細なコラージュ、そして、そのストーリーに大きな感銘を受けた。

そんな二宮さんに作品を作る上でのコンセプトを聞いてみたところ、「特にない」と言う。二宮さんの創作意欲は、彼女自身が「見たことのないもの」を見てみたい、それだけとのことだ。

 

電気グルーヴの音楽やジャケットデザインもしかり、その時その時でグッときたものや、今の自分にフィットしたものを刺繍として縫い込む。そうやって生まれたものが、誰かの目に触れたり、手にした際に驚いてくれたり、喜んでくれたら嬉しいとのこと。

ルールは決めないで、自由にやりたいと思ったことをやる。そんな彼女の創作理念によって、これからも見たこともない素晴らしい作品が生み出されることだろう。

 

今回のイベントに限らず、UTILITYは精力的にアーティストやクリエイターとのコラボレーションやイベント活動を行い、ユースカルチャーの新しい楽しみ方を伝えてくれる貴重なセレクトショップだ。是非、店舗まで足を伸ばして、UTILITYが作り出す世界観に触れてみてほしい。

All Photo

Recommend