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椿正雄のレコード・レコメン ビバップ、クールジャズ…奥深いジャズの世界

Dec 7, 2020 - FEATURE
下北沢で1982年から営業する老舗レコード店、Flash Disc Ranch(フラッシュ・ ディスク・ランチ)のオーナー 椿正雄が、いま聴きたい一枚をおすすめする企画。今回のテーマは、前回に引きつづき“ジャズ”。ひとえにジャズといっても、このテーマで連載がしばらく続けられるくらい種類が多いみたい。だから今回紹するジャズたちもそのほんの一部なんだとか。今回は一体なにがでてくるの?教えて、椿さん。

 

 

ハードなビバップ・・・? リー・モーガンの「THE SEIDEWINDER」

“ビバップ(Be-BOP)”ってわかるかな?すごく簡単にいうと、“ふつうの歌とはちがうメロディを演奏する”ということ。音階があっちこっちいっちゃうような突拍子もないメロディを演奏するジャズのジャンル。ジャズはもともと、歌曲を楽器に置き換えて演奏したのが原点なんだけど、ビバップは“歌えないジャズ”なんだよね。これがモダンジャズのはじまりなんていわれているよ。

その突拍子もないメロディの特徴を生かしながらも、ビートのメリハリをさらに強くしたのが“ハードバップ”。リー・モーガンは、そんなジャンルの第一人者。このTHE SIDEWINDERというアルバムはそんな彼の代表作。映画「私が殺したリー・モーガン」や「私がモーガンと呼んだ男」は、彼がモデルのドキュメンタリーだよね。おれはまだ観てないんだけどさ。

 

メロディックなヴィブラフォンがきもちいい。カル・ジェイダーの 「Saturday Night Sunday Night At The Blackhawk, San Francisco」

次に紹介するのは、ヴィブラフォン演奏者のカル・ジェイダーの一枚。彼は、ラテンジャズの第一人者として有名なんだけど、このアルバムにはラテンパーカッションが入ってないから・・・ややこしいけど“クールジャズ”っていうジャンルになるな(笑)。

流れるようなヴィブラフォンのメロディがきもちのいい一曲目。summertimeって曲は、「ポギーとべス」というミュージカルの曲のカバー。元々は歌曲だった曲を器楽としてカバーしているから、原曲の歌詞を知っているひとは、リズムに乗りながら、自然と口ずさむことができるはず。原曲はなぞっているけど、ジャズならではの修飾的なアレンジも感じられる。このあたりのジャンルは、ジャズの主流だし、一般的にも聴きやすいから、バーやカフェのBGMにうってつけだよね。

好き者たちからの人気者。ルーファス・ハーレイの「BAGPIPE BLUES」

いままで紹介した2枚とはちがう、ちょっと“外道”ともいえるジャズを紹介しようかな(笑)。ルーファス・ハーレイは、ジャズではまず使われない楽器をあえて使って演奏していることで有名なんだ。それはアルバムのタイトルにもなっている“バグパイプ(正しくはバッグパイプ)”という楽器。ただこのバグパイプ、どうやら音階のコントロールが難しいみたい。

一曲目に収録された、みんな知ってるメリーポピンズのChim Chim Chereeを聴くと分かると思うけど、結構メロディから音がズレちゃってるんだよね(笑)。でも、そのズレがカッコイイ!あと、バグパイプの音がひと続きで、途切れてないのがわかるかな?この楽器は息継ぎをしても、音を切ることなく演奏できるんだよね。鳴りやむことがないバグパイプの音が新鮮でおもしろい。そんな要素が新たな表現方法として認められたのかな。メロディを正確に演奏するとかじゃなくて、メロディに沿って吹こうと努力する彼の意志を感じることもできる。それもまたファンの心に響いてたりするのかもね(笑)。

取材協力:Flash Disc Ranch(フラッシュ・ ディスク・ランチ)