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柄本佑 × 金子大地 – 映画のすべてが先生になる

Sep 11, 2021 - FILM
揺るぎない個性と存在感をまといながらも、作品ごとに新しい魅力を放ち続ける俳優、柄本佑と金子大地。主演、助演を問わず日本映画界に欠かせない存在となった二人が、2021年9月10日(金)公開の映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』で初共演を果たした。お互いの印象から作品への想い、演技や結婚についてまで幅広く話を伺った。

 

金子くんは本当に嫌味の無い男前(柄本)

— 柄本佑さんと金子大地さんのお二人は、今作『先生、私の隣に座っていただけませんか?』が初共演なんですね。

金子大地(以下、金子):最初は緊張しましたが、佑さんとご一緒できてものすごく嬉しかったです。フラットに話しかけてくださって、本当に優しい雰囲気のなか撮影が行われたので、僕もどんどん気持ちがほぐれてとても楽しめた現場でした。

— 柄本さんはいかがでしたか?

柄本佑(以下、柄本):現場でも言った気がするんですけど、金子くんは本当に嫌味の無い男前なんです。こんなに真っ直ぐなイケメン、すごく珍しいなと思いました。裏表やいやらしさが無いので、セリフが相手にスッと届く感じがあって。他の出演作を観ても、コク深いんだけどエグみが無い。良い意味であまり顔がわからないんですよね。どこか匿名性があるというか、「こんな顔もするんだ」って気づかされる。これってすごく重要なことだと思うんです。

金子:嬉しいです。

柄本:今作で金子くんが演じた新谷(歩)という役は、真っ直ぐでエグみが無いだけでは駄目で、ある種の荒々しさも必要な難しい役どころ。でも金子くんは、本当に嫌味無くそこにいる感じがすごく良いなと思いながらご一緒させていただきました。

— 柄本さんが演じたのは、黒木華さん演じる佐和子の夫・俊夫。佐和子の担当編集者と不倫をしたことが原因で、精神的に追いつめられていくという役どころでしたが、どんなところを大事に演じていきましたか?

柄本:俊夫自身の行いによってこのような(精神的に追いつめられる)結果を招いているわけなので、100%悪いヤツではあるんです。でも作品を観終わったあとに、観客の方々が俊夫のことを「ただの悪いヤツ」ではなく「しょうがないな」と思うような方向に振りたいと(堀江貴大)監督が話していて。

だから俊夫のことをチャーミングに捉えて、「人間誰しもこういうことはあり得るよね」と感じさせるように演じたいなと。現場ではあまり理詰めで考えないのですが、いま考えると俊夫という人はすごく正直者で、明らかに不倫に向いていない男だった、というところが一番大事だったのではないかと思います。

— 物語が進むほど、俊夫に対してどんどん愛着が湧いてきますよね。

柄本:できあがった作品を観たとき、俊夫という役がかなりわかりやすく台本に落とし込まれていたように感じました。俊夫に愛着が湧くのは僕が演じたからというよりも、監督が仕組んでいたんだなと。

— 金子さんは、どこか実態が掴めない爽やかな教習所の先生・新谷を演じられました。

金子:新谷は「現実にいるのかどうかわからない」という、物語のなかでも結構重要な役で、演じるのがすごく難しかったです。でもオリジナル脚本で、監督のなかに思い描いている象がしっかりあったので、そこにちゃんと寄り添いたいと思っていました。

漫画から飛び出した王子様のような、妖精のような存在なんですが、ちゃんと人間味もあって。それは自分のなかに全く無い部分だったので、どうやって落とし込んでいけばいいのかすごく悩みましたが、監督が一つひとつ相談にのって一緒に考えてくださったのですごくありがたかったです。

— 堀江監督と一緒に役を作っていったんですね。

金子:はい。車のなかでのセリフの言い方もすごく難しかったんですが、監督と話していくうちにどんどん見えてきた部分がありました。

 

ひとつでも発見があると、この役を演じて本当に良かったなと思える(柄本)

— 俊夫が佐和子の漫画を読んで心がぐらつくシーンや、車中での2人の心理戦など面白いショットがたくさんありました。現場でのやり取りから生まれたところもあったのでしょうか?

柄本:みんなでご飯を食べている最中に、俊夫が「佐和子と向き合わなきゃ」と決意して2階に駆け上がっていくシーンがあるんです。その決意するタイミングで、僕はたまたまお箸でオクラをつかんでいて。「オクラ、どうします?食べてから行きます?それとも気にせず駆け上がります?」と監督に聞いたら「食べましょう」と。

— オクラを。

柄本:俊夫の心情としては、オクラどころではないと思うんですよ。オクラをつかんでいたとしても食べずに急いで階段を駆け上がっていくことが正しいはずなんですけど。そういうときにオクラを食べてしまうようなヤツだから、きっと不倫もしてしまうんだろうなと(笑)。

— すごく細かな部分ですが、芯をついた行動ですよね。

柄本:あのシーンは俊夫という人間を、「こんなときでもオクラを食べてしまう人」と説明するシーンになっている気がします。

恐らく観る人は誰も気にしない部分なんですけど、ひとつの作品に関わってひとつでもそういう発見をして、何かが動いたなと感じる瞬間があると、この役を演じて本当に良かったなと思えるんです。

— コンビニで俊夫が持っていた商品を、佐和子がスッととってレジへ向かおうとするシーンが印象的で、語らずとも夫婦の空気が見えたような気がしました。

柄本:たぶん佐和子が先手に回って、俊夫を悩ませるアクションのひとつというか。そのあたりから、佐和子が先手先手で、俊夫の方が後手後手に回っているんですよね。

監督がすごく心理戦を意識して、緻密に考えていたのだと思います。何気ないところでも目線のやり取りが行われていて。

— 心の動きは目線に現れると言いますからね。

柄本:2人が話をするシーンで、あるセリフでは俊夫が佐和子を見ているけれど、佐和子は俊夫を見ていない。次のセリフで俊夫が目線を外して、逆に佐和子が俊夫を見て…というように、緻密に計算しながら進めていきました。

— 金子さんは現場で印象的だったことはありましたか?

金子:佐和子さんと一緒に車にいるシーンがほとんどだったのですが、車のシーンはわりと濃密ですごく緊張しました。

— 車内ではドキッとさせるようなセリフも多かったです。

柄本:新谷はことごとく、佐和子が欲しい言葉をくれる人だったよね。

金子:はい、こんなに出るかというくらい(笑)。そのセリフを爽やかに、何のいやらしさも無く言わないといけなかったので、「本当にこんな人が現実にいるのかわからない」というところが演じていて面白かったです。

 

どこか隙がある人や、失敗が多い人の方がリスペクトできる(金子)

— 本作は“夫婦の話”ということで、柄本さんは現在ご結婚されていますが、実際のところ結婚って良いものでしょうか?

柄本:岡村靖幸さんが『GINZA』で連載されていた「結婚への道」というコーナーに出させていただいたことがあるんですけど、そこで「結婚とは意外と楽しいものである」と書いた記憶があります。

— 結婚はおすすめしますか?

柄本:おすすめしますね。蒼井優にもおすすめしました(笑)。その時まだ彼女は結婚していなかったんですけど、上から目線で「ありがとう」って言われました。

— 金子さんは結婚に興味はありますか?

金子:佑さんのお話を聞いているとすごく素敵だなと思うので、いつかはしたいなと思いますが、まだ今ではないということだけは確かです(笑)。 

— では最後に『先生、私の隣に座っていただけませんか?』というタイトルにちなんで、お二人にとっての先生を教えてください。

柄本:僕はやっぱり過去の映画ですね。作品はもちろん、そこに映っている先輩の役者さんたち全員がそうです。それこそ反面教師であっても。

金子:反面教師、わかります。僕は欠点がある人を見るとすごくリスペクトしてしまうところがあって……。

柄本:わかるわかる。

金子:完璧すぎる人よりも、どこか隙がある人とか、失敗が多い人の方がリスペクトできるんです。どこか信頼できるというか。 “先生”とか“兄貴”って呼びたくなります。

 

 

Profile _

左:金子大地(かねこ・だいち)
1996年9月26日生まれ、北海道出身。「アミューズオーディションフェス2014」にて俳優・モデル部門を受賞しデビュー。2018年、ドラマ「おっさんずラブ」(EX)で知名度を高める。翌年、ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」(19/NHK)で初主演を果たし、第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 新人賞を受賞。今年は、『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(21/松居大吾監督)、初W主演作『猿楽町で会いましょう』(21/児山隆監督)、『サマーフィルムにのって』(20/松本壮史監督)など出演作の公開が多数。そのほかの主な映画出演作品に、『逆光の頃』(17/小林啓一監督)、『ナラタージュ』(17/行定勲監督)、『殺さない彼と死なない彼女』(19/小林啓一監督)、『君が世界のはじまり』(20/ふくだももこ監督)などがある。「私はいったい、何と闘っているのか」(李 闘士男監督)が12月に公開。他3本公開待機中。

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右:柄本佑(えもと・たすく)
東京都出身。映画『美しい夏キリシマ』(03/黒木和雄監督)で主演デビュー。2018年は『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(冨永昌敬監督)、『ポルトの恋人たち 〜時の記憶』(舩橋淳監督)などでキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞、毎日映画コンクール男優主演賞などを受賞。『アルキメデスの大戦』(19/山崎貴監督)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。そのほか近年の出演作に、『居眠り磐音』(19/)、『火口のふたり』(19/荒井晴彦監督)、『Red』(19/三島有紀子監督)、『心の傷を癒すということ劇場版』(21)、『痛くない死に方』(21/高橋伴明監督)、ドラマでは大河ドラマ「いだてん」(19/NHK)や「令和元年版 怪談牡丹灯篭」(19/BSP)、「知らなくていいコト」(20/NTV)、「天国と地獄 ~サイコな二人~」(21/TBS)などがある。公開待機作品に『真夜中乙女戦争』(22/二宮健監督)。

Twitter

衣装協力(柄本佑)/ ジョルジオ アルマーニ

 


 

Information

柄本佑さん、金子大地さん出演
映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』

2021年9月10日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開。

その不倫、ぜんぶ描く。ウソとホンネが交錯する、漫画家夫婦の心理戦、連載開始!

出演:黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン
脚本・監督:堀江貴大
劇中漫画:アラタアキ、鳥飼茜
主題歌:「プラスティック・ラブ」performed by eill

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』公式サイト

©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

  • Photography : Yuki Yamaguchi
  • Styling for Tasuku Emoto : Michio Hayashi
  • Styling for Daichi Kaneko : Junya Chino
  • Hair&Make-up for Tasuku Emoto : Kanako Hoshino
  • Hair&Make-up for Daichi Kaneko : Taro Yoshida
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)