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2019
06.12
FEATURE

ファッションの“楽しみ”を伝えたい。日置貴哉|TakayaHiokiデザイナー

「形を変える服、さまざまな着方ができる服」をコンセプトに、古着を再構築した1点物をはじめ、今まで見たことがない形、さまざまな着方ができるアイテムを提案する日置貴哉。自らを「オタク肌」と語り、並々ならぬファッション愛に満ちた彼が、服作りに込める想いとは…
Profile
日置貴哉(ひおき・たかや)
TakayaHiokiデザイナー

文化服装学院卒業後、NICK NEEDLES(ニックニードルズ)やエイ・ネットでインターン経験を積み、2014年のSSシーズンから自身のブランドTakayaHiokiをスタート。

小学校高学年で『ファッション通信』に心酔

僕、小さいときから“光るモノ”が好きだったんです。親が持っている宝石とか。あとは、化石を掘るのも好きでした。川にある石を割ると、貝が入っていたりしたんですよ。親に頼んで、紫水晶の原石とか買ってもらったり(笑)。

人間の美的感覚の根源って、「きれいな石だな」とかいうところからきてると思うんですよね。自然な形のままのものというか。だから、ルックの撮影も僕が思う一番きれいな場所という意味で、いつも自然の中で撮っています。

ファッションというものを意識するようになったのは、小学校高学年くらいのとき。テレビで『ファッション通信』という番組を観て、はまっちゃったんですね。はじめはその前の時間帯にやっていた釣り番組がお目当てだったんですけど、その流れで観るようになって、もう毎週必ず観ていた。1996〜98年くらいだったと思うんですが、当時のイヴ・サンローランとかジョン・ガリアーノとかトム・フォードのグッチとか、本当にすごかったんですよ。その服がどこで売っているのかも知らなかったけど、ランウェイとかショーの裏側見るのがすごく楽しくて。本当に憧れの存在でした。

2015-16AWコレクションより

反対を押し切って進んだファッションへの道

中学2年くらいからはストリート系の服が好きになって、相変わらずファッションへの憧れはもっていましたが、進路にからめようは思わなくて。自分にはムリだろうなと思っていたから。それで、機械系の高校に進学したんです。でも高校時代にさらにファッションへの気持ちが強くなって、卒業後は文化服装学院に行きたいと思うようになりました。でも、親に相談したら反対されてしまって。

僕もそんなに押しが強いほうではないので、仕方ないから大学に(笑)。大学を卒業したときにまたアパレルを目指したんですが、そこでもやはり親には反対されました。こうなったら、自分で稼いで専門学校に入ろうと思って、機械メーカーに入って、そこで設計製図の仕事を2年間続けて上京したんです。

自分は作るより着るのが好きなんじゃないかと思って、文化服装学院ではスタイリスト科に入りました。コーディネートがすごい好きだったんで。

それまでも簡単なリメイクなんかはやっていたんですが、だんだんと自分で作るとかデザインするほうに進みたくなっていったんですね。けど、スタイリスト科からデザインに進める人間はほとんどいなかったし、そもそもどうすればいいかわからなかった。それで、ニックニードルズというぼくの師匠のブランドにインターンとして行かせていただくことにしたんです。

 

古着屋で学んだビンテージの魅力

ニックニードルズでは、それこそボタン付けから縫製、パターンまで仕込んでもらいましたし、ブランド設立の方法も教えていただけたのが大きかったです。2〜3年、古着屋でバイトをしながらアシスタントとして働かせていただきました。

ビンテージのリメイクは自分のブランドをはじめたときからやっていますが、ストリート系が好きだった時代やギャルソン着ていた時代は、正直古着嫌いだったんですよ。でも古着って、不思議なもので、新品で買ったものより使えたりすることがあるんですよね。時代が回っているっていうのもあるし、やっぱり独自性が出せる。だんだん見直すようになって、自分のスタイルとして定着するようになりました。

古着屋でアルバイトをはじめてからは、ビンテージのよさをとことん勉強しましたね。僕はビンテージのリメイクを作るとき、その元の服のよさを伝えるということも大切にしたいんです。

たまに「古いものは関係ない」とか言う人がいるんですけど、ファッションって10年、15年ごとに周期が来るっていうじゃないですか。だとしたら古いもの知らなきゃだめだと思う。ネットだけじゃ拾えない古い情報とか、本を買って読んだりしますし、やっぱり時代性ってすごく大事だと思うんですよね。

 

「形を変える服」で、洋服のもつ多面性を表現したい

ニックニードルズの後にエイ・ネットでもインターンをさせてもらって、自分の中でいろいろ経験を積んでブランドをスタートしました。

作りたいものはずっと前から決まっていて、デザインテーマは「形を変える服」なんです。何らかの形ですべてのアイテムが形を変える。それは、例えばドローコードを締めると形が変わるとか、古着の再構築であれば、もとの服から形が変わるわけですよね。

僕、昔ストールがすごく好きで。ストールって何でもできるんですよ。三角に折って結んでもいいし、ただ流してもいいし、アウターの中に入れても外に出してもいいし…。めちゃめちゃおもしろいじゃないですか。それで考えたのが「形を変える服」。洋服のもつ多面性を表現できたら、ファッションのおもしろさが伝えられるんじゃないかと思って。

ファッションって、本当におもしろいんですよ。何着てもいいですし、何と何を組み合わせてもいいですし、これとこれ合うの?こんな着方もできるじゃん!っていう喜び。それを伝え切れたら、もっとカルチャーとして強くなるんじゃないかと思うんです。

 

あらゆる側面に、ファッションのおもしろみがある

ずっとファッションを見てきて思うことは、ファッションに自由性がなくなってきたなということ。個性がなくなってきたというか。2006〜2008年とか、もっとぶっ飛んでたじゃないですか。その辺にくらべると個性がなくなってきたと感じますね。とはいえ、年々楽しみ方が変わるのもファッションのよさなんですけどね。2018年くらいからは、だれか影響力のある人がいて、その人が着ているものがカッコイイというのもあったと思うし、それはそれでいい。ファストファッションはファストファッションでいいと思うし、誰かの真似でもいいし、それもすべて、ファッションのおもしろみ。

僕はとにかく服が好きなんです。たとえ服を作ることが嫌いになったとしても、服を嫌いになることはありませんね(笑)。

 


 

「とにかくオタク肌だから、誰も知らないようなものを探してくるのが好き」と笑う日置さん。ファッションはもちろん、インタビューの合間には趣味の音楽に関してもその博識ぶりをうかがわせていた。好きなことを徹底的に知り、それを伝えようとする真摯な姿勢。『ファッション通信』に憧れたかつての少年は、今も「いつかはパリコレ」と想いを募らせている。

 

あなたにとってファッションとは?

「楽しみ」

 

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