RAKUGAKIが完全オーダーで作る15着限定のレザージャケット
本当は、レザージャケットは作らないと決めていた
−今回のレザージャケットは、活動の15周年を記念した特別なアイテムとききました。なぜレザージャケットというアイテムを選んだのですか?
実は僕、革のジャケットは作らないと決めていたんです。よく中国とかから安い革を買ってジャケット作ろうみたいな話があるけど、出所のわからない素材を使って作ることはやりたくなくて。
今回、革の卸しに詳しい人に話をきく機会があって、それで一枚の革ができるまでに何人もの職人さんの手を通っているんだってことを改めて知ったんです。このジャケットに使っているのは、国産の食肉用ホルスタインの雄の革。使わなかったら廃棄されてしまうものです。命を大切にさせてもらう、という意味でも、これで作る意味があると思いました。
理想の素材感を追求すると使用する部位にもこだわりたいので、そんなにたくさんは作れない。だからあえて数をおさえて、一着一着大切に作りたいと思っています。
一生着られるものを、RAKUGAKIらしく
−AZIさんがこだわった革の素材感というのはどういうものですか?
硬すぎず、柔らかすぎず、しなやかでハリがあるもの。一生着られて、“自分の形”になるものにしたいから、はじめからやわらかすぎないほうがいいかな、というのは意識しました。
−一生着られるというのはひとつのキーワードですか?
そうですね。だから、本当にスタンダードなライダースにしています。自分らしい表現をどう入れようかと考えたとき、レザーにも刺繍ができるというのをきいたので、じゃあ刺繍を入れようと。でも、あまり派手な刺繍を入れるとずっとは着られなくなると思ったので、黒のレザーに黒の刺繍を入れることにしました。夜になったらまったく見えないような(笑)。それで、黒い動物ってなにかなと思ったときに、黒ヒョウだなと。黒ヒョウって、ギリシャ神話では“抑制された本能を解き放ち、限界を超えるもの”の象徴とされていたようなので、そのパワーも込める想いでモチーフに選びました。
裏地のサテンには、自分が過去に描いたオオカミの一枚絵を落とし込んでいるので、レザーが牛で、刺繍が黒ヒョウ、裏地がオオカミ。動物園です(笑)。
黒子に徹する人への想いを込めた“BLACK TAG”ライン
−タグも今回のために作った特別なものがあるそうですが
“BLACK TAG”と呼んでいるんですが、革を作っている人も、刺繍をする人も、縫製する人も、たくさんの職人さんがいて、そういう人たちは普段表に出る人ではないですよね。みんな「僕たちが作りました」っていうわけではないから。そういう“黒子”に徹している方々を前に出そうと思って、この“BLACK TAG”ラインを作ったんです。
−黒子の黒なんですね。
はい。このタグひとつとっても、レピア織りという福井の職人さんの技術で作られているんですよ。表には出ない人の仕事があるからこそこれができている、というのをテーマにしたかったんです。絵はひとりで描けるけど、服はたくさんの人たちの協力なしには完成しない。でもそれが楽しい。
レザージャケットの刺繍も、群馬の横振り刺繍の職人さんが手掛けてくれています。80歳。この道60年だそうです。
足と膝を使ってミシンをコントロールしながら、手で生地を回しながら刺繍をしていくんですよ。すごい、ドラマーみたいな動きです。
横振り刺繍は荒くも細かくもコントロールできるし、職人さんの技術次第で自由自在なんですよね。ふわっとした仕上がりで、動物の毛を表現するのにはこの横振りが最適だと思いました。機械刺繍したスカジャンンとか、やっぱりちょっと絵が硬いんですよ。
−横振り刺繍だと、AZIさんの筆のタッチを再現できる?
そうですね。平面の絵が立体になる感じ。だから黒一色の刺繍でも、毛並みの凹凸が表現できるんです。グラフィティと刺繍ってすごく似ているなと思うことがあって。グラフィティではカラースプレーで描いたんじゃないくらい均等な線を引くのが上手いとされているんですが、刺繍も同じで、要は手でやったんじゃないでしょ?っていうくらい精度が高いほうがやっぱり上手いんですよね。でも、ほんのちょっと残ってしまう人間ならではの“ブレ”が味。やっぱり機械が作ったものって味気ないんですよ。
職人への敬意を込めた「龍虎相打つ」というテーマ
−先日Twitterにこんな投稿を見つけました。ここには職人さんへの想いが込められているんですね
いろいろとものを制作する上で、こだわりがありすぎるがゆえに、譲れない事や貫く事多数。
納得したものだけを世に出したいと思ってるけど、ひとりじゃやれない事も多いから、そのこだわりにお付き合いしてくれてるみなさんに感謝。— AZI (@AZI_0308) 2019年6月11日
そうですね。ずっと服作りをしていて思うのは、たとえば“Tシャツを作る”であれば、大学の時からシルクスクリーンもやっていましたし、どうすればいいかわかるんです。でも、刺繍とかレザーを縫うことに関しては、今からやろうとしても10年先とかじゃなきゃできないことで、やっぱりそこは誰かの力を借りなければならない。でも誰でもいいというわけではない。
そういう職人さんへの敬意を込めて、2019A/Wは「龍虎相打つ」っていうのをテーマにしているんです。それは、ものすごく優れたもの同士が対峙しているという状態を指す言葉。優れたもの同士であれば対峙できるけど、片方が弱かったらつぶされてしまう。自分と職人さんが対峙して、お互いのプライドでもの作りをしているというのを表現したくてこの図柄を選びました。
僕の服作りはその大半が絵を描くことなんです。原画がちゃんとしていないといいものはできないし、職人さんにも失礼だと思う。それを常々自分に言い聞かせながら、もの作りをしています。
今回の、Rakugaki 2019 A/W のテーマは “龍虎相打つ!”
メチャクチャ優れた職人さん達に制作サポートしてもらってるからこちらも負けじと良いグラフィック作ってある意味対抗する感覚
妥協せず、張り合ってこそ、良いものが出来る
それを表現したくて、このグラフィックを描いた pic.twitter.com/6r0P0UtIuX
— AZI (@AZI_0308) 2019年6月27日
職人に対するリスペクトと、絵作りへのこだわりが込められた15周年レザージャケット。15着すべてに、AZI自らがステンシルローラーペイントでシリアルナンバーを施していく。今回はこの貴重な15着のうち1着をQUIで特別受注。AZIと職人の魂を感じてほしい。
【素材】
表地:牛革
裏地:ポリエステル100%
【サイズ】
Sサイズ
肩幅:42.5cm
胸囲:100cm
着丈:65cm
袖丈:61cm
Mサイズ
肩幅:44cm
胸囲:104cm
着丈:67cm
袖丈:63cm
Lサイズ
肩幅:45.5cm
胸囲:108cm
着丈:69cm
袖丈:65cm
XLサイズ
肩幅:47cm
胸囲:112cm
着丈:71cm
袖丈:67cm
【価格】198,000円
- Text : Midori Sekikawa
- Photography : Naoto Ikuma