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old honeyの温度 — これまでと、これからと

Jan 20, 2020 - FASHION
デザイナーの原まり奈が手がける「old honey(オールドハニー)」のアイテム名は温度(℃)で表現される。その理由や歴史を、ブランドスタート以来はじめて振り返った。そこから見えてきた、ブランドの成長とデザイナー原まり奈の心境の変化とは。
Profile
原まり奈(はら・まりな)
old honey デザイナー

2013年バンタンデザイン研究所スタイリスト学科在学中にoldhoneyを⽴ち上げ。翌年ファッションデザイン学科X-SEEDに編⼊。バンタンとPARCOが主催するAsia Fashion collectionで受賞し、2015年2⽉にNY Fashion Weekでコレクションを発表する。ドラマ「ファーストクラス2」への⾐装提供やsuperfly、ゆずなどアーティストの⾐裳も⼿掛ける。

装飾性を温度(℃数)で表現

―商品名の℃数に焦点を当てて、ブランドを振り返るのは初めてですか?

はい。今までなかなか振り返る時間がなくて。けど、ずっと気になっていたので今回このような機会ができて嬉しいです。

―そもそも、なぜ商品名を℃数表記に?

old honeyの洋服って装飾が特徴でリボンやフリルが付いてるものが多いんです。なので商品名を“L/S T(ロングスリーブTシャツ)”とか普通なのは自分の中でしっくりこなくて、極端にいうと“夢見るワンピース”みたいなのも考えたんですが、私のネーミングセンスが全然なくて(笑)。これをずっと続けるのは苦しいんじゃないかと。

当時はコンセプトを“甘さが苦味にかわる瞬間の儚さを纏う”にしてたので、冷たいものが苦いとか暖かいものが甘いとか、温度が関わっていけるんじゃないかと思い、装飾度合いの高い低いを℃数で表現する方法をフッと思いついたんです。

2016SS ファーストシーズンの絵型

―℃数にして良かったこと、大変だったことは?

良かったことは、℃数って何?と引っかかりをもって貰えることや、old honeyらしい個性を表現できたことかなと今では思います。ただ大変だったのは、私の感覚で付けているので℃数の基準は?という質問に明確に答えられないこと。この℃数を使ってもっと面白いことをしたいのですが、現状手がまわっておらずもどかしい気持ちもあります。

 

℃数で振り返るold honey

ー過去の平均℃数は55℃で、最も多かったのは58℃でした。

やっぱり!なんとなくわかります(笑)。無意識に平均を保っていますね。

old honeyで一番最初に生まれた商品が2016SSシーズンの58℃topsなので、実は58℃を基準にしてるんです。

―基準は50℃ではなく、58℃なんですね?

自分の気持ちの平均は50℃なんですけど、作ったものがそこより少し高く感じたんです。なので今のコンセプトの「日常に特別を添える服」とあるように、old honeyの洋服は私が普段着るものよりも少し℃数が高いんです。

―商品名が被ることはないのでしょうか?

最初は被らないようにサンプルを撮ったチェキを並べて確認してましたが、型数も増えキリがないので2019SSからは品番で管理し始めました。なので、今は被っている商品名もあります。

―2018SSは今までで一番型数が多いですが、心境の変化があったのでしょうか?

2018SSは初めて合同展示会に参加したので型数が増えています。2017AWまではオンシーズンで作っていましたが、2018SSからは一般的なファッション業界の流れに変えたタイミングだったので、制作の進行が被っておりこの時期は凄く大変だった記憶があります。

また、意識的に合同展示会に参加することを決めたので、今までのクラフト感の強いデザインの他に、よりリアルクローズな商品を少し増やしました。

型数を増やした事で、2018SSからLOOKのコーディネートをold honeyの商品だけで組めるようになりました。このLOOKが完成した時、やっと作りたいものが出来たと感じました。今も同じチームでLOOKの制作を行ってますが、特にスタイリングを任せている友人の関口さんはキーパーソンで、私とは違う感性でコーディネートを組んでくれるんです。彼女がいなかったら今のold honeyのイメージはないんじゃないかなと思います。

2018SSのLOOKのコーディネートは平均97℃

―シーズンごとの℃数の変化から感じることは?

2016 SSのファーストシーズンが59℃で一番高いですが、思いっきり好きを詰め込んでいますね。それは今も大事にしている感情ですが、今ならここに低いものを差し込む作り方をします。当時はまだLOOKやラックに掛けた時のイメージまで考えていませんでした。

―その後、20℃や22℃と低いものが入ってきましたね。

その辺りは、ワッペンを貼っただけとか、盛り具合が少ないという理由で低くしています。ただ、今見るとボディーは結構デザイン性がありますね(笑)。

この辺は、自分で行う手刺繍の作業の多い少ないで℃数を決めていました。ミシンの作業は℃数を低くしています。今は全体的な仕上がりのバランスで℃数を決めてますが、当時はハンドステッチの量で決めてました。ファーストシーズンと比べると思考の変化が大分ありますね。

―今も手作業が入ってますが、今後もずっと続けるのでしょうか?

続けます。安心するし、好きなんです。手でやる作業が。それによって温もりがでるというか、old honeyらしいという安心感があって、なくてはならないものですね。

 

自分の中の次のハードルを設ける

―振り返ってみていかがでしたか?

℃数は自分の中で感覚的な部分だったので、それを数値化して振り返れたのは良かったです。今は全シーズンの平均が55℃で保たれていますが、あえて崩してみても面白いかなと思いました。

実は以前に、「どのシーズンも同じラックで並べられるよね」って言われたことがあって。それが“らしさ”でもあるのですが良くも悪くも今回の表を見て「なるほど!」と。学生の頃から何をやっても原っぽいと言われており、それが強みでもあるのですが、今回を機にそろそろ自分の中で次のハードルを設けてもいいのかもしれませんね。

 

面白いことを実現するためのゴール

ーold honeyと℃数のこれからは・・

℃数を使って最後は綺麗に着地ができたらいいなと思います。立ち上げから私自身もブランドと一緒に成長していて、凄く人間味のあるブランドだと思っているので、old honeyらしい着地をしたいです。

例えば、過去の℃数を表にして個展を開いたり、お客さま同士で何℃が好きとか話せる場をつくったり、洋服を作り続けてきた意味を何かの形にして、最後は自己愛が強いものができたらいいなと思います。

長く続いていけたらと思う反面、去り際も大事ですよね。これまである程度やらせてもらった中で、終わりをきちんと設けないと筋書きが決まらないと感じています。それがいつとか明確なものはないんですけど、面白いことをやるにも意味のあるものにするためにも、そのゴールが必要だなと私は思っています。

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  • Text : Seiko Inomata
  • Photography : Naoto Ikuma