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2019
06.06
FEATURE

団地、秘密基地、色水、絵本。mimom(ミモン)がたどる自らのルーツ

いつも気にとめないような風景も、彼女の目と手のフィルターを通せば、なんとも愛らしく、どこかノスタルジックに表現されてゆく。それはまるで粘土をこねて作ったような、手ざわり感のある3DCGで描かれる不思議な世界。初の個展を終えたばかりのmimom(ミモン)さんが話す、今展の振り返りとこれからの活動について。
Profile
mimom(ミモン)
デザイナー

1990年生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻修了。デザイン事務所に所属し、ロゴ・広告・パッケージなどグラフィックデザインを手がける傍、3Dソフトを使い、デフォルメした日常風景や架空の世界を描くデザイナーとして活動。

https://www.mimomweb.com/

故郷を想像したときに思い浮かぶ団地の光景

— 初の個展を終えられたばかりですが、まずは開催にいたるきっかけを教えてください。

いつもはSNSで作品を公開しているんですけど、今回は画面を通してではなく、空間で見ていただきたいなというのがあって。

mimom 1st Solo Exhibition|2019.05.10-13 at SHIBUYA SOMO|幼少を過ごした団地を描いた作品の発表の場として、初の個展を開催した。団地は現存するが、あえて記憶だけを頼りに描いた。時を経るにつれ実際に体験した景色や出来事が混ざり合い、半分現実・半分夢のような存在として記憶の中に建ち続けている団地の光景を描き留めた。(撮影:Rintaro Kanemoto)

— 場所へのこだわりがあった?

「個展」ありきというよりは……ちょっと話が前後しちゃうんですが、「SUZURI」というオリジナルグッズを手軽に作成できるWEBサービスがあって、そこで吸着ターポリンというポスターとアクリルブロックが新作として出るときにコラボレーションさせていただいたんです。作品が大きなポスターとして出力されて壁に貼られている写真を見て、時間によって見え方が変わることが面白いなと思って。

今回の個展の作品は自分が小さいころに住んでいた団地をテーマに描いているんですが、絵に太陽の日が射したり風に吹かれて揺れたり、紙に印刷した時に加わるざらっとした触感だったり、そういうところを見てほしいというのがあったので個展という形で発表しました。

— 紙への出力には苦労しましたか?

そうですね。紙もいろんな種類を試して刷ってみてというのと、色に関してはRGB値で作っているのでモニターで見るのが色の再現性が高いんですけど、今回は紙への出力(CMYK)でいかに自分が思い描いている色を表現するかということをトライしました。

— 紙への愛着はありますか?確かに3DCGは、モニターとの相性が良さそうですが。

紙は好きですね。色とか触感とか含めて。紙屋さんの紙見本とか、もう一日中見ていられます(笑)。紙に印刷するということも含めて興味があります。

— 今展でテーマに掲げた「団地」というモチーフはmimomさんにとってどのような意味を持ちますか?

15年間暮らしていたので、故郷というものを想像したときに思い浮かぶのが団地の光景です。自分の表現にとってもルーツになっている場所なのかなと。

— 個展の反響は?

来てくださった方から「モニターで見るのとはまた違って、ギャラリーへの道すがらや、場所自体の空気感も含めてひとつの作品になっていた」というコメントをたくさんいただけたので、それはすごく狙いどおりにいきましたし、実際に展示ができて良かったなと思いました。

— 今後のクリエーションに繋がりそうですか?

空間で絵を見ていただくことは今後もやっていきたいなと。今回はパネルに絵を貼って展示したんですが、立体の作品も一緒に置いて、空間と絵と立体とということで展示ができれば面白そうだなと思います。

 

手と3Dを行き来しています

— 立体といえばmimomさんはご自身でも粘土細工を作られていますね。

あれは全然遊びなんですけど(笑)。もともと作品の質感がマットで粘土っぽい形をしているので、キーホルダーのお仕事をいただいたときは実際に粘土で作ってみて、サイズ感や形状のデフォルメを試しながら3Dソフト上で形を作りました。

— CGをそのまま立体化しても良くはならないのでしょうか?

私が3Dで1枚の絵を作るときは、ある一定のアングルからベストに見えるものを作っていくので、3Dをぐるっと回して別のアングルから見ると、サイズ感や配置が不自然に見えることがあるんです。たとえば、厚みのある立方体を正面から見たとき、本当はすごく厚みがあるのに薄く見えるということが起きますよね。こういったとき、ペラペラに見えてしまわないように、本来よりたっぷり奥行きを持たせるので、横から見ると不自然に長かったりします。立体化する場合は360°どのアングルから見ても自然な形になっていることが理想なので、自分で実際に手を動かして作ってみないとちょっとつかめなくて。手と3Dを行き来していますね。

— なるほど。もともと子どものころからもの作りが好きだったんですか?

そうですね。むしろそれぐらいしか好きなことなかったんじゃないかってぐらい(笑)。

— 作ったもので、古い記憶に残っているものは?

それこそ団地で作っていた秘密基地とか。段ボールを解体して、自分が入れるサイズならなんでも秘密基地にしてたんですけど。あとは花とか草で色水を作ってヤクルトのカップに入れて、いろんな色を混ぜ合わせて実験的なことをしてみたり。

小さいころに気に入っていたものを展示会のように並べた作品。グリコのおまけ、サンゴのかけら、ぎりぎりまで使ったクーピーや鉛筆。

— そんな幼少期のエピソードは、現在のmimomさんの作品やもの作りの姿勢にも大きく影響を与えているように感じます。

うーん……小さいころ勉強も運動もあんまりできなかったんですよ。ほめられるという体験があまりなかったんですけど、絵を描いたり作ったりということに関してはすごくほめてもらえて。あと、作ったものをプレゼントして喜ばれたのがうれしかったり。そういった体験があって作るということは自分にとって大事なこととしてずっと残っています。

— 良い作品ができたなと思うことは?

今回の団地をテーマにした作品は、個展中に一日中見ていたんですけど、記憶の中で大切に残せるものが描けたと思っていて。自分のよりどころがひとつ増えたように感じます。

— 具体的に良し悪しを評価するポイントはありますか?

感覚的ですが、自分自身が誰に対しても「見てください」といえる作品かどうかかなと思います。

 

楽しい絵本や、憧れが増える絵本を描いてみたい

— mimomさんのツイッターで、「絵本を作りたい」というツイートを見ました。

個展の絵を描きながら、そういえば絵本から影響を受けた部分がたくさんあったなと思って。小さいころ親がたくさん絵本を買ってくれて読んでいたんですけど、絵本から遊び方を学んだり、憧れを覚えたり。たとえば秘密基地や色水を作ること、木の実を集めること、絵本にそういう物語があってそれに影響されていて。自分のルーツを考えたときに、絵本は外せないなと。そういう楽しい絵本や、憧れがひとつ増えるような絵本を自分でも描いてみたいなと思っています。

— 文章を書くのも好きですか?

文章はてんでだめなので、文字なしで絵だけでも楽しめる絵本にしたいなと。いまでも活字読むのが苦手なんです。長い文章を読んでいると、すごい胸焼けみたいに……(笑)。小さいころに読んだ絵本も絵や色づかいは覚えているんですが、物語の中身はあまり覚えてなくて。だからきっと絵だけを見ていたんじゃないかと……。

— ツイッターにリストアップした絵本で、とくに思い入れのある作品は?

リストのアイテムは大人買いしました!一番は『14ひきのシリーズ』でしょうか。いわむらかずおさんが描く、ねずみ一家の物語です。

— どんなところが魅力ですか?

絵本の中にいろんな植物が出てくるんですが、遊び場だった団地や野山にも同じものが生えていたりして、絵本と現実をリンクしやすかったんじゃないかと思います。あと、単純に食べ物が好きで、ねずみが木の実を食べているのを見ていいなあって(笑)。

『からすのパンやさん』とか『だるまちゃんとてんぐちゃん』は、絵本の中に小さいものがたくさん描かれていて、そういう小さいものがたくさん並んでいるというのはいまもすごく好きで。『ミッケ!』とかもそうですね。

— 色に対するこだわりは?

強いかもしれません。自分の個人制作を見ていると同じような色を繰り返し使っていたりするので、感覚的に好きな色とか好きな組み合わせはあるんだろうなと。

— 普段のインプットは?

クレイアニメや、海外のカートゥーンアニメ、最近は『リラックマとカオルさん』というNetflixで配信されているコマ撮りアニメを見ています。屋内のスタジオで撮影していると思うのですが、夕暮れ時や雪の日の自然光の再現度や表現がすごくて。私も3Dで作った物体をカメラで撮っているようなイメージでビジュアルを作っているので、コマ撮りアニメはライティングや質感の勉強も兼ねて見ています。

— 最後に今後の展望を教えてください。

やっぱりいま一番は絵本を作りたいということ。何らかの形で実現したいです。

あとは立体を作りたいというのはずっとあるので。小さいものでいえばグリコのおまけみたいなものとか、大きいものならたとえば工場の絵があって横にドンと立体のパイプを置くとか。自分で実際にやりとりをしながら形や質感もこだわって作りたいですね。

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