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浜野謙太 – ただの役者じゃ嫌だ

Apr 21, 2021 - FILM
実力派ミュージシャンでありながら、その唯一無二の存在感を武器に役者としても第一線で活躍する浜野謙太。
2021年4月29日公開の映画『くれなずめ』で演じたのは、お調子者のいじられキャラである曽川拓(ソース)。これからの日本映画界を代表するキャストやスタッフが集結した今作に、ひとりの表現者としていかに向きあったのか。

演じているだけではない、ひとりの人間としてのリアルな感情

— 映画『くれなずめ』のオフィシャルサイトでは、「松居監督の映画はほぼ観ていて、念願叶ってご一緒の現場」だったとコメントされていましたね。

出演できることになったときはめちゃくちゃうれしかったです。「やっと一緒にできる」と思って。出演の相談は松居くんから直接もらったのですが、マネージャーに「どうにか調整してくれ」って頼みましたもん。

— そこまで出たかったのはどうしてですか? 浜野さんの思う松居監督作品の魅力ということにもつながると思うのですが。

何ていうんですかね……松居くんの作品では役者が役者の枠を超えている気がするんです。役者さんたちがみんな「ただの役者じゃ嫌だー!」っていっているような感じがするというか。だから「僕もただの役者じゃ嫌だー!(松居監督の作品に)出たいー!」って(笑)。

— 「ただの役者じゃ嫌だ」というのは?

役者って、変幻自在にいろんな役を演じる仕事で、その人の意思がなく見えることもある。悪い言い方をすると、駒みたいに見えてしまう。

でも松居くんの作品では、みんながそれに抗おうとしている感じがするんです。ドキュメンタリー性というのかな。役者はいろんな役を演じる人ではあるけど、リアルに存在する一人の人間でもある、ということを改めて実感するというか。

— “演じている”だけではないものを感じる?

そうですね。リアルなその人の“今の感情”みたいなものを感じる。少なくとも、そういうものを切り取ろうとして、もがき苦しんでいる感じがする。そこにパワーを感じるんです。

— 『くれなずめ』の脚本を読んだときはどう思いましたか?

1回じゃちょっとよくわかんなかったですね。松居くんの作品って、だいたい見終わった直後は「ん?」と思うことが多いので。そういうところも含めて、松居くんらしいなと思いました。ひたすら茶化して、本当のことはちょっとしか見せない。

この作品は、言っちゃえば「友達が一人死んだ」というだけで。そのなかのどこに本当のことがあるのか、誰にとって本当のことなのか。“友達が一人死んだ”ということに対しての“本当”をどう表現するか。「こんなやり方があるんだ!」と思いました。でもそれは脚本を読んだだけではわからなくて。

— いつわかったんですか?

最後のシーンを撮ったあとです。みんなで鼻水垂らしながら号泣しながら撮って、「結局、悲しいし、寂しいんじゃん」って。それを伝えるために成田凌まで、高良健吾まで使ったんだなと、そこでわかりました。

 

松居くんは、監督というよりキャプテンみたいな感じ

— 浜野さんから見て、現場での松居さんはどんな監督でしたか?

出来上がりのイメージのことしか考えてない人でしたね。だから監督としてすごく信頼できました。役者として共演しているときと全然顔が違って。松居くんが常に「ハァハァ」言ってる感じ。『私たちのハァハァ』(2015年公開の松居大悟監督映画)ならぬ、「僕たちのハァハァ」だったのかな(笑)。

— 松居監督が見ている出来上がりのイメージは、出演者にも見えているものなんですか?

どうだろう。一緒に見ているのかと思いきや、一歩引いて見ていたりもして。だからずっと「俺ら一緒に作ってますね!」という感じでもないんですよね。それが面白いところでもあって。

— そこが「一緒に役者をやってるときとは違う顔」の所以なんですね。

そうですね。あとは“これ以上入ってくるな感”がありました。共演者のみんなが撮影の合間に、俳優さんや映画の話とかしてた時に、やっぱすごいなと気圧されちゃった時があって。なんならみんな音楽も詳しかったりしてそこでも引目を感じたりもしましたが(笑)。だからせめて松居くんに馴れ馴れしくしようと思ったんだけど、松居くんは松居くんで監督モードに入っていて相手にしてくれなくて(笑)。でもそのおかげで、変に馴れ合うことがなくていい感じでした。

— 監督の演出についてはいかがでした?

気持ちについて言ってくれるので、監督というよりキャプテンみたいな感じでしたね。「こうしてほしい」というよりも「もうちょっと感情を高めていこう」とか「もっと行ける!」みたいな。

— “役者が役者の枠を超えて見える”というのはそういう演出から出てくるものなのかもしれないですね。

そうだと思います。僕も引き出してもらった感じがします。

 

 

“年上の俳優さん”というポジションになってしまったらつまらない

— 共演者のお話も聞かせてください。先ほど、話についていけなかったというお話もありましたが(笑)。

くだらない話はしてましたよ(笑)。

— 成田凌さん、若葉竜也さん、藤原季節さん、目次立樹さん、高良健吾さん、そして浜野さんの6人が物語の中心でしたが、高良さん以外は初共演ですよね。共演する前と後で印象が変わった方などはいますか?

成田くんかな。思った以上にタフでした。線が細いし、ダメ男の役が多いから、そういう役に近いイメージだったのですが、実際は6人の中で一番タフに感じたし、かつ度量がすごい。お芝居でこっちが何をやっても、パンって返してくれて。“兄さん”みたいな感じでした。

あと、最初のほうは季節くんや若葉くんに「一緒にできるなんて夢みたいです」って言われてた高良くんが、撮影の後半にはめっちゃいじられてて、何か嬉しそうなのが面白かった(笑)。

— 実際に劇中の6人のような関係になっていったんですね。

そうですね。僕自身もそういう関係性になれるようにちょっと心がけましたし。みんな才能があって、今ぐんぐん来ている俳優さんたちだし、何よりも自分より10歳くらい若い人たち。そんな彼らの、まさか後輩役ということで心配もあったのですが、“年上の俳優さん”というポジションになってしまったらつまらないし、頼りない人くらいの感じになれるといいなと思って、家庭の事情とか相談に乗ってもらってましたもん。「どうやったら妻とうまくいくかな?」とか。僕以外誰も結婚してないのに(笑)。

— (笑)。演技面で印象的だったやりとりはありますか?

カラオケボックスでみんなでお酒を飲むシーンがあるのですが、ノンアルコールなのに季節くんが勢い余って吐いちゃって。「これ、使えないよな」と思いながらも、「何やってんだよー! お前!」とか言いながらも撮影を続行していて。で、カットがかかったときに季節くんが「やっぱダメっすかね。やりすぎちゃいましたかね」って言ったんです。それを聞いて、ちょっとでも「これ使えないんだろうな」って思っちゃった自分が恥ずかしいなと思いました。そこまで突っ走れるの、すげーなって。

— 年下の共演者に刺激をもらえる機会でもあったんですね。

本当に。季節くんは僕がバンドをやっていることとか経歴を知らなかったんですけど、最終シーンのスタンバイの時に「(演技)いいなって思いました。一緒にできてよかったです」とふいに言ってくれて。「今!?」と思ったけど、すごくうれしかったです。

あと若葉くんが撮影最終日に「SAKEROCK好きでした」と言ってくれたのもうれしかった。「そんなもん最初に言ってくれりゃいいのに!」とも思いましたけど(笑)。俺なんて、終始「みんなとできてうれしい」って気持ちで、犬が尻尾振ってる状態だったのに! でも、それぞれに距離感を考えてやっていたんだなと思うと、本当にみんな食えない人たちだなと思いましたね。

 

作品の中に、生き生きとした俺がいたなって誇れる

— 俳優歴も15年を超える浜野さんですが、今「アーティストと役者を両立していてよかったことは?」と聞かれたら何と答えますか?

まずは僕が今回この映画に参加できたこと。役者の仕事で今の地位を築いているこのメンバーに入れてもらえたのって、シードみたいに感じます。松居くんは僕の音楽歴を知っていて、そのおかげで仲良くさせてもらっていたので。だから彼らの役者談義に気圧されたのも当然のことかもしれません。だからこそ求められることもあると思いますが。

— 今回でいうと、松居監督にどういうことを求められていたと思いますか?

飛び道具的というか、ちょっと人間離れした部分かなと思います。最初に吉高由里子ちゃん主演の映画『婚前特急』に出させてもらったときに、批評で「こんなやつ絶対にいない」って書かれたんです。そこがいいって。今回僕が演じたソースもそういうところがあると思っていて。「こんなやついねーだろ」って思うんだけどいる、みたいな。

(成田凌さん演じる)吉尾たち6人ってみんなスクールカーストでいうと、下のほうの人たちなんだけど、ソースは意外とそこを突きやぶれるような力を持っているように感じて。無鉄砲に穴を開けるだけなんだけど……そういうことが、ポンってできる人。だから、下地がミュージシャンである僕がここにいられたのかなとも思います。飄々として、横槍を入れられる存在として。とはいえ、これからも役者をやっていく以上、もっといろんな役ができないといけないなとも思っていますけどね。

— 冒頭で「僕もただの役者じゃ嫌だー!」と思ったという話をしてくださいましたが、『くれなずめ』の撮影を終えて、ただの役者じゃなくなった実感はありますか?

そうですね。(『くれなずめ』のフライヤーを見ながら)「ここにちゃんと、生き生きとした俺がいたな」って誇れるんですよ。僕だけじゃなくて、きっとほかの役者さんもみんな。ちゃんと役者が刻まれている映画になっていると思います。

 

Profile _ 浜野謙太(はまの・けんた)
1981年8月5日生まれ。神奈川県出身。バンド「在日ファンク」のボーカル兼リーダー。俳優としても映画、ドラマ、CMなど多数出演し、その独特の存在感とキャラクターで注目を集めている。主な出演作品に、『婚前特急』(11/前田弘二監督作)、『武士の献立』(13/朝原雄三監督作)、『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』(16/熊切和嘉監督作)、『闇金ウシジマくん Part3』(16/山口雅俊監督作)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17/瀬々敬久監督作)、『九月の恋と出会うまで』(19/山本透監督作)、『おいしい家族』(19/ふくだももこ監督作)、『ロマンスドール』(20/タナダユキ監督作)などがある。公開待機作品に『夏への扉 キミのいる未来へ』(21年公開予定/三木孝浩監督作)がある。

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松居大悟 – なんでもないことが愛おしい
Apr 20, 2021

 

 


 

Information

映画『くれなずめ』

2021年4月29日(木・祝)テアトル新宿他にて全国ロードショー

ある日突然、友人が死んだ。僕らはそれを認めなかった。

監督・脚本:松居大悟
出演:成田 凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹/飯豊まりえ、内田理央、小林喜日、都築拓紀(四千頭身)/城田 優、前田敦子/滝藤賢一、近藤芳正、岩松 了/高良健吾

主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」(Getting Better / Victor Entertainment)

『くれなずめ』公式サイト

©2020「くれなずめ」製作委員会

  • Photography : Kenta Karima
  • Styling : Shunsuke Okabe(UM)
  • Hair&Make-up : Kosuke Abe(traffic)
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Text : Chie Kobayashi
  • Edit : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)